Nectar【川村壱馬】

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朝起きて携帯を見たら、LINEの通知が入っている









" 昨日はありがと。
おかげで治ったから、仕事行ってくる "









朝の５時。起きるには早すぎるくらいの時間にそんなメッセージが来ていた









熱が下がって食欲が戻り、よっぽどお腹が空いていたのか、作ったおじやを全て平らげた壱馬









薬を飲み、再び大きなソファーで眠る彼の寝顔をずっと見ていたい気持ちを抑えて、帰宅した昨日









良くなったみたいで、本当に良かった…









「って、やっば！！」









ゆっくり準備をしていたら、
あっという間に家を出る時間になっていて









急いでパタパタと家を飛び出した









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「ごめんなさいマスター！！」









駆け足で佐野珈琲に入ると、マスターはにこやかな表情で迎え入れてくれた









マ「おはよう。寝坊したのかい？珍しいねぇ」









おっとりとした喋り口調は、まるで遅刻が嘘かのような、ゆったりとした時間をつくりだす









「昨日眠るの遅くなっちゃって…」


マ「泊まったの？」


「ううん、ちゃんと帰ったわ」


マ「てっきり泊まってきたのかと思ったよ」


「病人の家に泊まる程、
自己管理が出来ない女に見える？笑」









奥でシャツに着替えて、エプロンを着ける









髪の毛を縛りながらそう言って出て行くと、珈琲豆の瓶を丹念に拭いているマスターが笑う









マ「そうは見えないに決まってるじゃない笑」


「でしょ〜？」


マ「行かせておいた俺が言うのもなんだけど、移ったらうちも困るもんね」









テーブルを拭いていると、A目当てで来るお客さんも多いんだから〜と、冗談を溢す









そういえば…キス、したんだっけ









移る、という単語を聞いて思い出したのは









マスクしてるからええやろ…？と、熱っぽい瞳で近付いてきた、昨日の甘い時間の事









「……」









ダメだ、思い出しただけで蕩けてしまいそう









マ「A」


「はいっ！」


マ「何、どうかした？笑」


「何でもないっ」









私ってこんなに少女みたいな反応するんだ？









……あの頃の私が見たらドン引きしそう









マ「で、頼みたい事があるんだけど」









カウンターへと視線を向けると









マ「LDHへ配達に行って欲しいんだ」









そう言ったマスターは
また少年のように、悪戯に笑ってみせた




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