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「ここか…」
目の前にそびえ立つ大きなマンションからは、セキュリティの厳重さが伺える
中に入るのを少し躊躇ってしまうような高さでも
部屋の番号を教えられ、部屋に向かう連絡を入れられたものだから、意を決してエントランスに入る
恐る恐る言われた番号を押し、しばらくすると
壱『はい…』
「あ、佐野珈琲です」
壱『え、A?』
「はい…?」
壱『…今開ける』
ウィーンと開いた自動ドアを通り
エレベーターに乗り込む
何か、驚いてたような気がしたけれど…
少し力のない声を聞いた瞬間、心配が勝った
目的の階へ到着してインターフォンを押すと、少し経ってから、ガチャリとドアが開いた
壱「…何で来てるん?」
「何でって…マスターに頼まれて…」
壱「…そうなん?…ゴホッ」
「…大丈夫?」
壱「こんなん平気…移るから早よ帰り?」
マスクを着けた彼の、黒くてサラサラの前髪から覗く目は、とろんと落ちそうで
「…帰れない」
壱「…え?」
「そんな姿見たら、私帰れない」
壱「…あかんて」
「…あかん、くない」
風邪を引いている彼を困らせたくはない
でも、弱った壱馬を…好きな人が弱っているのに、何もせずに帰れる程の強さこそ持っていない
関西弁を真似てみると、下手くそ、と笑われて
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壱「…移っても知らんで?」
そう言った彼は、部屋へと招き入れてくれた
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壱「ごめんな、散らかってんねん…」
ケホ、と小さく咳をして、マスクを一枚取り出した
壱「着けて」
「大丈夫だよ?」
壱「あかん、せめて着けて移るから」
「…分かった」
やっぱり迷惑だったよな…と思いつつも
綺麗なままのキッチンに気が付く
「まだ何も食べてないの?」
壱「食欲あらへんの」
「薬は?」
壱「まだ飲めてへん…」
「そっか…じゃあ丁度いい」
ずり落ちそうなタオルケットが置いてある大きめのソファーに、ゆっくりと腰掛けた壱馬
「少しだけ、待ってて」
壱「…おん」
キッチンを借り、挽いてきた豆でカフェラテを作る
壱「珈琲?」
「熱を下げたり、ウイルスを外に出してくれるの」
へぇ、と伸ばした袖でカップを持ち
ゴクリと飲み込む
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蘭(プロフ) - スーさん» 初コメントありがとうございます!この作品が大好きだと言って頂けたので、これからも頑張れそうです涙 そう言って頂けると自信がつきます!是非これからの展開も楽しみにして頂けたら嬉しいです(^^) (2019年11月18日 19時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - hkrさん» 何回も読み直して頂けているなんて…感激です…。長い文章を書いてしまっているため、読むのが大変だと思うので、尚更感激です…涙 これからも頑張りますので、是非楽しんで頂けたらと思います(^^)ありがとうございます! (2019年11月18日 19時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!全て読んで頂けたなんて嬉しすぎます涙 楽しんで頂けているみたいで本当に嬉しいですし、これからも頑張りたいと思えます!是非これからも宜しくお願い致します(^^) (2019年11月18日 19時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
スー(プロフ) - 初コメントです!いつも、楽しくよませてもらってます!この作品大好きです!これからも頑張ってください! (2019年11月18日 7時) (レス) id: d70ff03ee4 (このIDを非表示/違反報告)
hkr(プロフ) - 更新ありがとうございます! 蘭さんの作品が好きで何回も読み直してしまいます(●´▽`●) これからも更新頑張ってください! いつも楽しみにまってます(´∀`)!! (2019年11月18日 4時) (レス) id: 6c0b67dbf3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘭 | 作成日時:2019年5月26日 22時