240話 「大人げないと子供げない」 ページ47
「それはどうでもいいわアホ。また買ってやる」
『いやぁ……それは遠慮したいんですけど』
若干引き気味に断っている彼女とそれを面白がっている左馬刻を眺めていれば部下……柊がこちらを見ていた。
俺が気づくとバツの悪そうな顔をしながら小走りで駆けてくる。
「入間さん………」
「到着が遅れてすみません。目を離した隙に少し………申し訳ありませんでした」
GPSも不調のようでしたし、と事実を述べる。
だが言いたいのはそれではない。
「………なぜ、止めなかったんですか?」
「……すみません」
「彼女は一般人です。なぜ無謀な事をする彼女を止めなかったのですか?」
「ッ、すみません」
「顔に煙草を押し付けられる彼女をよく傍観なんてできましたね。あなたそれでも警察ですか?何も思わなかったんですか?」
「それは……」
「そんなに自分の顔が大事でしたか?」
『銃兎さん』
カツカツカツと踵の音。そちらを向けば先ほどまで左馬刻の傍にいた彼女が距離を詰めてきていた。
痛々しい火傷に目が言ってしまったせいで、その表情までには意識が向かなかった。
バチンッと鈍い音が耳のすぐ近くで鳴る。想定外の事に固まってしまったが、叩かれたことでズレたメガネを直しながら彼女に視線を向けた。
「A、さん?」
『……全部俺が勝手にやったことなんですけど』
「……ですが、貴女は一般人で彼女は警察です。いざという時は身を挺して護らなければならない……それに貴女は女性です、顔に傷なんて」
『柊さんも女性ですけど』
赤い目が燃えている。
柊の前に立ち、俺を見据えるその目が静かに燃えていた。
『柊さんの顔に傷がつくのと、俺の顔に傷がつくの……俺が自分で判断して、俺が勝手にこっちを選んだんですけど文句ありますか。なんなら柊さんは最初俺を庇おうとしてました。何度も言いますけど、勝手に俺がやったことなんで』
「ッ、ですが彼女は」
『ああもう、ですがですが煩いですね。彼女は警察?警察だったら結婚式前でも顔面潰さなきゃいけないんですか?いいでしょ結婚式前くらい。つーか花嫁さんの顔面潰してまで自分の顔面護れるほど人間腐ってないです馬鹿にしてるんですか』
「………」
『そりゃ柊さんだってそのくらいで結婚なくなるとか思ってないでしょうよ。でも不安は残るに決まってる……相手方の家族は?友人は?……俺には一生縁のない話かもだけど、縁が無いからこそこうしたんです。もう一度言いますけど、文句ありますか?』
241話 「エゴでもなんでも」→←239話 「すみません×2」
207人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ