239話 「すみません×2」 ページ46
鋭い殺気をぶつけられたと思ったが、すぐにスッと銃を降ろした彼女。
『……ンだ、銃兎さんと左馬刻さんじゃん』
若干ギラついたままの眼でこちらを見ていたがその危なげな光もすぐになりを潜めた。
クルリと後ろを向いた彼女は俺の部下に声をかけてから、一緒に腰が抜けてしまっている女たちに手を伸ばして立たせ、一人一人に怪我がないかを確認して回っている。
『みんな無事っぽいな……よかった』
「そのようですね」
パトカーのサイレンが聞こえてきた。
俺のしくじった部下も応援を連れて向かっていたんだったなと思い出す。横の左馬刻は無言で煙草を取り出し、火をつけよう……としてやめたらしい。
彼女は何やら倒れている男の見分を始め、うち一人の懐からリモコンのようなものを取り出した。
上がり始めたシャッター。そのずっと先には複数台のパトカーと、女の集団。先ほど倉庫の場所を教えた彼女が開くシャッターに気づき走り出すと、他の女たちも向かってきた。
こちら側に残っていた女たちも一様に表情を明るくし、外に向かって走り出す。
合流した二つの集団は抱き合って、笑いながら泣きながら無事を喜んでいるらしかった。
それを無言で見ている俺の部下と彼女。「はぁ〜」と長い息を吐きながら彼女が座り込んだ。
『女子ってすげーなぁ。今日会ったばっかなのにあんなに仲良くなっちゃってまあ』
「命懸けの中で生まれた友情ですね」
『女の子サマにこんな無茶させちゃって……俺もまだまだだな』
「でも、ああやって笑ってます。あなたが居なかったら、今頃彼女たちは」
『みんな無事でなによりってね。柊さんも』
「……Aさん」
『ん?』
「すみません。本当に……すみません」
『…………いいよ。俺が好きでやったことだし』
彼女の隣にしゃがみ込んで謝る俺の部下に笑って返す彼女。少し顔をこちらに向けたことで見えるようになった左頬。
そこには見るに堪えない火傷が刻まれていた。
「……おい、ダボ」
スタスタと歩み寄って彼女を呼んだ左馬刻。
声に反応して顔を向けた彼女は盛大に眉を顰めた。
『うげ、左馬刻さん』
「うげ、じゃねえよ。勝手に消えるんじゃねえ」
『好きで消えたわけじゃないんですけど……すみません』
「ん」
彼女の頭をわしゃわしゃと撫でた左馬刻。
それに対してもう一度「すみません」と謝りながら立ち上がる彼女。
「ンな何回も謝っても変わんねえぞ」
『あ、いや………今のはせっかく服買ってもらったのにダメにした件について』
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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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