238話 「願いを背に受け」 ページ45
男の手が彼女の顎に伸び、顔を固定した。ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら煙草を持った手を持ち上げ、そのまま火のついた先端を彼女の頬に………。
「「クソが!!!!」」
端末を投げ出して車を飛び降りた左馬刻。俺もほぼ同時に同じ行動をとった。
彼女の呻き声が鼓膜に焼け付いて離れない。
数ある倉庫の前に来て端末を投げ捨ててきたことを思い出す。しまった、どの倉庫なのかわかったもんじゃない。取りに戻るか?
その時、女の集団が目に付く。その中の明るい髪色の女がこちらに気づき、全速力で走ってきた。
「ッ!!おい左馬刻」
「あ゛!!?」
「助けて!!こっち!!!はやく!!!」
叫びながら俺たちの目の前まで来た女は俺と左馬刻の腕を取るとそのまま走り出した。
鬼気迫る彼女の様子に一瞬呆気にとられたがすぐに我に返りどの倉庫かと聞けば「一番端!!海側の!!」と指さしながら叫ぶ。
相当今まで走ったのだろう、彼女は大分息が上がっている。気力だけで走っていると言っても過言ではなさそうだ。
「わかりました!」
限界が来たのか気が抜けたのかへたり込んだ彼女。
介抱してやるのが正解だろうが、やはりそれどころではない。無視して走る俺たちの背中を押すように彼女が叫ぶ。
「お願いします!!お願いします!!!」
正面のシャッターが閉まった倉庫。中から大きな音は聞こえてこない。前からは入れなさそうだと側面に回れば鍵がかかったドアがあった。ドアノブに手を伸ばそうとした瞬間、ひとつ呻き声が聞こえた。中からだ。
中の状況を探ろうと聞き耳を立てたが、それ以上なにか聞こえることはない。
不気味に思いつつもドアノブを捻ると意外にも鍵はかかっておらず、左馬刻がこちらをちらりと見る。一つ頷くとゆっくりと扉を開けた。
中は静かだった。数人の呼吸音が聞こえるだけ。足音を忍ばせながら倉庫内に入ったが、すぐにその足は止まることになる。
『………はぁ、しんど』
片足を伸びている男の腹部に置いたまま天を仰いで呟く彼女。だらりと垂れている右手には木刀がしかと握られており、脚、服、胴体、顔……至る所に血がついている。
呆気に取られて二人して固まっていれば、「ひっ!」と小さな悲鳴が耳に入る。どうやら奴の斜め後ろに固まっている女達の一人が俺たちに気づいたらしい。
瞬間、恐ろしいスピードで女たちの集団に駆けていき、女の一人から流れるように銃を掻っ攫った彼女が銃口をこちらに向けた。
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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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