227話 「執着≒愛着?」 ページ34
「あの売り場のところに落ちていたと他のお客様が」
「………預かっとくわ」
「一応ご確認を。双方の着信履歴でいいですので」
めんどくせえがバッグの中から奴のスマホを取り出し、不在着信の時間と俺が電話を掛けた時間を見せる。「失礼しましたと。ではお願いいたします」と頭を下げた店員の女に適当に返事をして奴のスマホをバッグに入れようとしたが、裏面が不自然にぬるりと滑った。
「あ?」
裏面を見れば恐らく口紅の類だろう。
慌てて書いたらしく、文字がヨれているがしっかりと識別ができる。
まるで血文字だな、などとどうでもいいことを思ってしまったのは柄にもなく焦ってるからだろう。
――HELP
あんなガキ相手になにマジになってんだかと思う自分もいるが、もう誤魔化しも効かねえなと自嘲気味に笑う。
一度目はガキの頃。二度目は数年前。………三度目はねえ。
自分の意志だろうがどっかのゴミの意志だろうが関係あるかよ。
手から滑り落ちる前に、今度こそ。
「……おいウサちゃん、ちょっと手ェ貸せや」
両手を縛られ、フルスモークのワゴンの中に乗せられた。
同じような状況の女の子たちが乗っていて、さしずめ俺は最後らしい。
「時間ギリギリに上玉だな」「運がいいよな。これでどやされずに済む」「さて、さっさと運ぶか」「他の奴らも順調だとよ」……助手席と運転席の男二人の会話が聞こえてくる。
どうやらこんな感じの車がほかに数台ありそうだ。
動き出した車。俺が座っている席は運転席の真後ろだ。後ろの方からすすり泣く声やら、不安げな気配やら……まあ、このまますぐに大暴れしてもいいけどそういうわけにもいかない。
はぁ、とため息をつけばスカートの中から銀が出てきた。声を出すことはできないので目だけで様子を窺えば俺の服をよじ登り、襟から服の中に入った。おーおー、そこか。確かにそこが収まりはいいだろうね。男子中学生の夢だろうけど。俺も夢だわ。何とは言わないが挟まりたい。
車は二十分ほど走り続け、どこぞかで停まった。車のドアを開けられ、降りろと促される。大人しく従って連れられて行けば、いかにもな倉庫。ふーん。
「入れ」
倉庫の中の事務所のような部屋に放り込まれる。
背後で閉められたドアを一睨みしてから部屋を見回した。両手を拘束された高校生から大学生くらいの女の子が合わせて二十数名。見張りの男はおらず、窓もない。今入ってきたドアも外から鍵を閉められているだろう。
はぁ…どうすっか。
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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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