196話 「護れる限度」 ページ3
「ちげぇわ」
『あだっ』
突然話の内容がすり替わったと思いきやそんな事もなかったらしい。軽く頭をはたかれて声を上げる。
『死なない奴とかいう選別条件おかしくないですか?』
「俺はこれ以上護るには手一杯なんだよ」
『……あ、妹さん』
銃兎さんが言っていたが、左馬刻さんには妹がいるらしい。唯一の家族で、今は一緒に住んではいないが相当可愛がっているそうだ。シスコンってやつだな。口が裂けても言えないけど。
にしてもそうか、そうだよな。左馬刻さんも置いて行かれるのが怖いとか思うんだな。
「俺様を何だと思ってやがんだダボ」
『うっげ口に出てたやっべ!』
「おーおー、二度と口きけなくなる前に治せよ」
頭を半ば押さえつけるようにわしゃわしゃと片手で撫でられた。ぐっちゃぐちゃになった髪の毛を手櫛で整えながら左馬刻さんを盗み見る。機嫌は……大丈夫そうだ。
ホッと安堵のため息を漏らせばハンと鼻で笑われる。ギョッとして猛スピードで顔を向ければ呆れたような左馬刻さんの横顔が見えた。
「一々ビビってんじゃねえよ」
『……いや、左馬刻さんヤクザじゃないですか』
「こんなに優しいヤクザさん他に居ねえぞ」
絶対嘘だろ。
実際のところ左馬刻さんの家に来たのは既に片手の回数を超えている。だからこそ一郎の「手ェ出されるなよ」発言に内心首を傾げていたわけだが。
家主の後に続いてドアを潜って靴を脱ぐ。脱いだ靴は端に寄せて並べる……っと。
んなことをしている間に一直線にキッチンに向かい、冷蔵庫を開けている左馬刻さん。
「なんか食うか?」
『いや、晩御飯友達の家でご馳走になったんで』
「ん」
『あ、じゃあ俺風呂沸かしてきますね』
許可が下りたら風呂に入らせてもらおう。午前十一時前に入ってしまったもんだからなんか微妙だ。一日結構動き回ってるし。
浴槽内を掃除してお湯を溜めながら、洗い場を掃除する。そこまで汚れていないが、最後にハウスキーピングしたときから一週間。まあ、気になるよね。
『うし、こんなもんだろ』
リビングに戻ればいくつかのツマミを並べて、ゆったりワインを飲んでいる左馬刻さんが目に入った。テレビを眺めながらグラスを傾けているわけだが……ムカつくほどに顔がいい。
認めるのは癪だが静かに見とれていればこちらに気づいた左馬刻さんがチョイチョイと指で呼ぶ。怖いので従う一択だ。この場合、顔は関係ない。
「ん、おりこーサン」
『え?』
「オラ、ご褒美」
あ、チータラ美味い。
207人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ