207話 「職業病なんです(などと供述しており)」 ページ14
「はぁ……相変わらず辿り着くのに一苦労ですね」
スーツのジャケットを腕に引っ掛けて姿を現した銃兎さん。
季節はもう直ぐ梅雨だっていうのに、相変わらず隙の無い風体をしていりゃ暑いだろう。理鶯が水を入れたコップを差し出している。
男らしく一気に飲み干した銃兎さんは、俺を見るとにっこり笑った。ずり、と半歩後ろに下がる。出会って数か月、銃兎さんのこの笑顔は何かしら聞き出したいときに見せるやつだ。
『な、なんですか?』
「先に言わせていただくとすると、あの暴漢共はとりあえずまとめて豚箱へぶち込んできました」
『………言い方に含みがありますけど』
「含ませてますからね」
煙草を一本取り出した銃兎さん。慣れたように指を炎に変えて近づければまたにっこり笑う。今度のは普通の笑顔だ。ジジッと小さい音を立てて煙草の先が赤く染まる。
たっぷり煙を吸い込んでゆっくりと吐き出した彼は真剣な顔をして口を開いた。。
「単刀直入に言えば、お願いがあるんです」
『……なんですか?』
「今回の件は、私が揉み消します」
『……分かりました。なんか理由があるんでしょうし』
「やけに聞き分けがいいですね」
『そうですか?』
銃兎さんが汚職警官だってのは当の昔から知ってるし、そんな感じなんだから何かしら理由があってのことで揉み消すのだろうし、第一俺は迷惑かける気も邪魔する気もない。キヨばあに危害が加わるなら話は別だが、そういうことはないだろう。なんせ揉み消すのは銃兎さんなのだ。この人は別に悪徳ってな文字が引っ付いているだけでちゃんと警察なわけだし……まあ、大丈夫っしょ。
あ、俺?俺は大丈夫。別に今更。
「……交換条件があるなら聞きますが?」
『いや、ホントにそういうのはないんですけど』
「遠慮せずに」
『ないんですってば。それともなんですか、ギブアンドテイクじゃないと落ち着かない病気なんかに罹ってるんですか?』
「きっと職業病ですね」
『認めないでくださいよ……』
項垂れた俺をなんだと勘違いしたのか、理鶯が頭を撫でてくる。
うん、だから頭痛いとかじゃないんですよ。いや、いろんな意味で頭抱えてるけど。
つーかこれ本日二回目だぞこのやろう。
『あー、じゃあめんどくさい事頼みますけどいいですか?』
「一人でケーキ屋にマカロン買いに行くくらいが限界ですが」
『き、基準が謎ですけど』
「小官は問題ない。その件は小官に頼んでくれ」
『………それでいいのか理鶯』
「さん」はどこかへ旅に出た。
208話 「三人纏めてバッドで打ち返す所存」→←206話 「圧倒的フュージョン」
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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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