204話 「血振り」 ページ11
『………ん?』
庭先の方でなにやら気配がした。
ひとりじゃない……三人ほどか?クソ、銀いねえしな。
「どうしたんだい?」
『キヨばあ、ちょっと硬くて長いもんないか?』
「長いものねえ……銛が庭にある物入れにあるわよ」
『銛は違うな……』
「どうしたってんだい、Aちゃん」
俺の緊張になんとなく気づいたのか、少し声を潜めて滝さんが聞いてきた。
なんとなく嫌な予感がするので正直に申し上げよう。
『誰か……庭先にいる気がする』
「ッ!……Aちゃん、滝さん」
息をのんで立ち上がったキヨばあは俺の腕を取って立ち上がりながら滝さんも招く。
居間の奥の部屋……俺は初めて入ったが仏壇がある和室に入ってぴしゃりと戸を閉めた。
「どうしたキヨさん」
「最近ね……たまに来るんだよ」
「まさか」
「Aちゃんがいるからかもねえ……ああ、Aちゃんは悪くないんだよ」
『……大体察した。要するに、キヨばあの娘に似ている俺がいるのがその……旦那さんを殺したであろうヤクザさんたちにとっては』
「都合が悪いんだろうねえ……だから暫くここでやり過ごしたほうが」
『……いや。不味いな』
庭の気配が近づいてきた。
侵入する気満々ですね。流石はヤクザ。銃兎さん呼んでやろうか。いや、間に合わねえか。
俺と滝さんが息を詰める中、キヨばあは仏壇の前に座って手を合わせた。
先ほどのアルバムの中にいた男の人の写真が飾られた仏壇。俺にそっくりな娘さんの写真はない。なんだかんだ言ったって、キヨばあだって願っているのだろう。娘さんが、まだ生きていることを。
ん?
『き、キヨばあ』
「なんだい?」
『こ、これは?』
「蒼龍という刀だよ。なんでも先祖代々伝わる刀で、戦国時代のころから伝わってるって聞いてるけど」
『………嘘だろオイ』
「知ってるのかい?」
『知ってるも何もこの刀』
刀を手に取った瞬間、居間からこの部屋に続く襖が開く。
案の定三人のガラの悪そうな男がお目見えである。
カチンと鯉口を切る。慣れ親しんだ感覚。そのまま一閃。
『……峰打ちだし死にはしないでしょ』
さて、110番……ってなんかめっちゃ着信来てる!!なんで!!?
本日初めてスマホを開いたが、こんなことになってるとは思いもしなかった。
……いいや、110番の前に銃兎さんに電話しよう。そして銃兎さんに110番お願いしよう。
何時もの癖で軽く血振りをして蒼龍を鞘に戻した。
誰も血なんか流してないのにね。そういう世界にいるのにね。
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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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