特進さんと彼女さん (ページ30)

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・.酒井忠次ページ30

｢やっぱり苺かな、それともチーズ｣
｢もうどっちだっていいだろ｣
｢よくない、誕生日だもん｣
目の前で微笑ましい会話をする若い二人。
うん、可愛い。生きてきて三十年以上のおじさんがこんな事思うなんて気持ち悪いかもしれないが、この二人をこの言葉以外では表せない。若いって素晴らしい。

｢ったく、じゃあ俺が決めっから外で待ってろ｣
｢ええ、酒井君が決めちゃうの？｣
｢お前どんだけ悩むつもりだ、日が暮れんだろ！｣
確かに。優柔不断なAちゃんだから時間はかかるよね。それでも、それでも誕生日なんだから選ばせてあげればいいのに！Aちゃんの大好物がケーキだって知らないの？この彼氏さんは！
カランカランとAちゃんが扉を開けた。
少し残念そうな横顔が窓から見える。
全く、何なのこの馬の骨は！

｢苺の二つとチョコの二つ、それからプリンを四つ、お願いします。｣
｢え、あ、はい！｣
ちょっと待って、思わずびっくりしちゃったよ。だって彼氏さんが言ったのAちゃんが特に好きなケーキなんだもの。しかもプリンなんて、ケーキの次に好きな物はプリン！ってAちゃん確か言ってたなぁ。
しかも迷わず自分の好きじゃなくて彼女の好きを選ぶだなんて。
やるなこの馬の骨、なんて思いながらケーキを白い箱に入れる。渡す時にはしっかりお金が用意されていて、なんて手際がいいんだ。

｢あの〜次のフェアっていつからですか？｣
｢えっと次はクリスマスで、十一月二十からですね。｣
彼の急な質問にカレンダーを見て答える。男の子なのにフェアだなんてもしかして甘党男子なのかもしれない。
｢ああ、ありがとうございます。いや、あいつがここのケーキ好きみたいで。｣
ちょっと照れた様にそう言ってケーキの箱を受け取った彼は、急ぎ足でAちゃんの元へ行く。
彼氏さんごめん。馬の骨なんて言って。