007 ページ9
·若武side
「祐樹さんは幽霊になってた。人間は死ぬと、肉体と幽体を脱いで魂になる。その中で幽霊って言うのは死んで間もない者、或いは自分の死に混乱して幽体に留まっている者のことを言う。
まぁ、祐樹さんはお前らが熊について話している間に成仏したから今はいないけど。」
...嘘だろ......
あまりのことに全員で絶句していると、七鬼がそんな俺らの様子を見て首を傾げる。
「で、祐樹さんから聞いたこと話したいんだけど、いい?」
...どうぞ。
正直頭が追いつかないので、考えることを放置して、七鬼にクイッと顎で促した。
それに頷き七鬼が話し出す。
「祐樹さんが言うには襲いかかってきたやつは一見かなり人間にそっくりだが、全く違う生き物だったらしい。長い爪に素早い動き。力は全然敵わない。怪我を負わせてもすぐに治る。助かるには逃げるしかなかったって。
...最初に親のいる部屋が襲われたそうだ。それで別室で寝ていた祐樹さん、奈子ちゃん、立花は目を覚まし、そちらに向かったって。
...そして、親が目の前で引き裂かれるところを目撃した。」
思わず息を詰める。
周囲も顔を強ばらせたり、泣きそうな表情で七鬼の言葉を黙って耳を傾けた。
「その化け物が祐樹さんたちに気づいて襲ってきて、一番に奈子ちゃんを狙ったらしい。それを我に返った祐樹さんがギリギリの躱したけれど、足に爪が刺さってとても逃げられる状態じゃなく、その隙に奈子ちゃんは結局殺された。
次は怪我をして動けない祐樹さんを狙うかと思いきや、その化け物は恐怖で固まって動けなくなっている立花を襲おうとしたそうだ。
それで、祐樹さんは必死に立花に呼びかけて、突き飛ばして逃がしたそうだ。
立花は何とか祐樹さんを助けようともしたらしいけど、追い払ったって。で、その後を追おうとする化け物を最後の力を振り絞って食い止めて、時間を稼ごうとしたのを最後に記憶がないそうだ。
だから...立花が無事かは分からないって。」
明らかに暗くなった七鬼の顔。
誰もが言葉を失い、空気が重くなる。
脳裏にニコニコと人懐っこく笑う奈子ちゃんや無表情だけど優しくてカッコいい祐樹さんの顔、素敵なアーヤの両親が思い浮かんだ。
一体、その場にいたアーヤは、祐樹さんは、どれだけ傷ついたのだろうか。
どれほど辛かったのだろうか。
...想像も、つかなかった。
·
71人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Lua - とても面白いです!はやく続きが読みたいです! (2021年9月13日 7時) (レス) id: 7cef825e60 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - とても面白いです!続き待ってます (2021年1月24日 8時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 奏さん» ありがとうございます!!更新遅めですが頑張ります! (2020年11月15日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - とても面白いです。これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2020年9月14日 17時) (レス) id: faad7bf9c4 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 紅楓さん» ありがとうございます!ちょこちょこ更新出来たらいいなと思っています。頑張ります!! (2020年8月30日 0時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:セダム | 作成日時:2020年6月8日 23時