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___満月の夜。
月明かりだけが頼りな、真っ暗な夜道を彩は1人必死に足を動かしていた。
履いていた履物は脱げ、足から血が流れる。その痛みと先程目の前で起こった出来事に堪えきれずボロボロと涙を流しながらも前だけを向く。
" 助けて...助けて、みんな......"
どんなに着物が肌蹴ても、髪が乱れても、息が上手く出来なくても、決して立ち止まったりはしない。
だって、立ち止まった瞬間。
自分を待ち受けているのは
" 死 "
それだけだから。
後ろから迫ってくる見たこともない気持ちの悪い生き物。遠目から見れば人間のようにも見える。けれど、人間とは全く違う、おぞましいもの。
それは先程、穏やかに眠っていた彩以外の家族を襲い、喰らいついた。目の前で引き裂かれる親だったもの。悲鳴を上げながら助けを求める妹。必死に逃がそうとしてくれた兄。
4人を無惨に殺したそいつ。
許せない...絶対に、許せないッ......!
一瞬で湧いた殺意。
けれども、それすらも上回る恐怖が次の瞬間には彩を襲っていた。
自分も、家族だったものと同じように引き裂かれ、恍惚とした表情でこんな奴に喰われるのか。
...嫌だ。まだ、まだ...死にたくないよぉ.....
そう思った時には身体が動いていた。
こちらに伸びてきた腕をスレスレで躱し、全力で走る。
普段仲間から鈍臭いだとか、ノロマだとか言われていた自分とは思えない程の速さで避けた。
そして、逃げた。
必死に、逃げた。
彩は足は速かった。
いつも一緒に遊んでくれる仲間はみんな運動神経が良かった。
山に登って山菜採りに行ったりする時も彩が息切れしてクタクタなのに対して飄々とした表情でこちらを心配し、どんどん山菜を採って来てくれるのだ。
その仲間が皆、男の子だったこともあるかもしれない。男女の体力に差があっても当然だから。
けれど、彩はそれがとても悔しかった。
彩は少々負けず嫌いな節があるとても優しい女の子だった。
だから、友達たちにはバレないようにこっそり朝走ってみたりした。体力をつけ、足の速さで彼らに少しでも気を使わせないように。
おかげで、相変わらず、体力に差はあったものの、男の子に混じっても引けを取らない速さで走れるようになったのだ。
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Lua - とても面白いです!はやく続きが読みたいです! (2021年9月13日 7時) (レス) id: 7cef825e60 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - とても面白いです!続き待ってます (2021年1月24日 8時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 奏さん» ありがとうございます!!更新遅めですが頑張ります! (2020年11月15日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - とても面白いです。これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2020年9月14日 17時) (レス) id: faad7bf9c4 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 紅楓さん» ありがとうございます!ちょこちょこ更新出来たらいいなと思っています。頑張ります!! (2020年8月30日 0時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セダム | 作成日時:2020年6月8日 23時