幼なじみは鈍感な向井くん。【橙】

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「久しぶりやなあ。何年ぶり？」

「うーん、高校卒業以来やから……六年とか？」

「元気しとったん？ Aはお人好しやから、また無理難題押し付けられてパンクしてたんちゃう？」

「……まあ、たまに」

「今は大丈夫なん？」



久しぶりだと言うのに、康ちゃんは私の心配ばかりする。

同じ歳やのに妹のように思ってそうで、子供の頃からそれが嬉しいやら情けないやらやった。



「大丈夫。今は実家で働いとるし、そうそう追い詰められることもないで」

「あー、そう言えば跡継ぎやん。あれ、でもA和菓子作れるん？」

「無理無理。私、不器用やし」



せやな〜！って笑う康ちゃんは手先が器用で、小さい頃よく父ちゃんに「康二は将来うちの店を継げ！」なんて言われてた。

ほんとにそうなれば、私は康ちゃんのお嫁さんになれる……そう思ってたのに。



「康ちゃんは、何処で働いてるん？」

「俺はタイ料理屋。オカンの知り合いの店なんやけど、どうせ料理人になるなら故郷の味学びたいと思ってな」

「そっかあ。今度食べに行ってええ？」



ドキドキ。

ダメって言わたらどないしよ。



「もちろん来てや。まあ、まだ大したもん作れんけどな！」

「…うん、それでもええわ」



康ちゃんとは久しぶりやったけど、やっぱり居心地は良くてまだまだ話しかった。

やけど人気者の彼は直ぐに誰かに呼ばれて「またな！」と、私の頭を撫でて去っていく。




「……もっと話したいンは私だけなん」




去って行く背中になら素直に言えるのにな。









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康ちゃん下のカフェテラスで待ってるわ


そろそろお開きの時間になって康ちゃんからメッセージが届いた。


キョロキョロ周りを見てみたら、あれ？いつの間にか康ちゃんおらんやん。




「Aこの後どうする？ カラオケとか行く？」

「あー、ちょっと予定あんねん」

「そうなん？ やったらまた今度行こな！」

「うん、行こ！」




ホッと胸を撫で下ろす。

上手く笑えてるかな？


人からの誘いを断るの苦手やわ。









「康ちゃん？」

「おー、来た来た！ 連絡先変わってなくて良かった」


送ったあとに、ちゃんと届くか不安になったらしい。

そやね。長い事連絡すら取ってなかったもんね。





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