命にキスを 〜アウトローな未来のお話〜

九　ケーキを買った後、高速 ページ9

コンビニでコーヒーを買ったあと、テレビや雑誌でよく特集されているケーキを買った。キャロルが欲しいと言ったので、買いに行った。イチジク、ザクロ、ブルーべリー、ストロベリーなどがたくさんのっている、甘酸っぱい平らなケーキだ。乳製品は不使用らしいので、アレルギーを心配することはないそうだ。

　――何故かよく分からないが、俺ひとりで列に並ばされた。他の五組はカップルと並んでいるというのに、物悲しくなってくる。乙女チックな色使いの店に、男がひとりで来店している。言っておくが俺はオネェでもオカマでもない。でもないけれど、伝わらないので店の人は俺を見てクスクスと笑っていた。
　
　都会・イエローフォックスを出るためラプタン高速道路に乗った。ケーキを買ったあとはデートにでも行こうと思ったが、キャロルがクリスマス渋滞に巻き込まれるのを心配し、早くも出ることになった。

　買ったコーヒーはまだほんのり温かみを帯びていたが、身体を暖めるほどではないだろう。だが、なんとなく口に含んだ。

　とりあえずクリスマスプレゼントをあげるという事は出来たので良かったとは思う。

　キャロルが言っていた通り、高速は渋滞した。二十一世紀の頃は渋滞がなかったと何かの本に書いてあったが、本当なのだろうか。俺はつくづくそれを疑問に思う。怒り紛れにクラクションを鳴らして、立て続けにこう言った。

「くっそ野郎。流石クリスマスだな」
「そう怒らないの。ねぇ、高速降りない？ こんなコンクリートと街灯だけしかない場所にいるなんて私はごめんなんだけど」
「はぁ？ いつもはそんなこと言わねぇじゃねーか」俺は右眉毛をぴくりと上げた。


「いつもって何よ？ 今日はクリスマスでしょ」


　……そう来たか。


　俺は肩をすくめた。
　スプリングフィールドとウースターの真ん中、キャテット方面に左折し高速を降りた。

　キャロルは高い鼻をさらに高くした。きめの細かい、透き通ったように白い肌。アーモンド色の大きい目についた、長い眉毛。街灯に照らされた琥珀色の髪の毛。小さくて淡い赤色の唇。

　――誰にでも優しいところ。
　俺はキャロルに会って直ぐに、彼女の魅力に気づいていた。だが、普段のくだらない起居挙動のせいで忘れかけていた。

十→←【第二章】　八　やめよう。無駄だ

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