命にキスを 〜アウトローな未来のお話〜

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仕事場(マサチューセッツ州の都市スプリングフィールドのダウンタウンにある)に戻るまで、約五時間ほどかかる。その途中に何か良い店があればと思うが、こんな時間で、しかも雪で窓の外がよく見えない状況では難しいだろう。クリスマスプレゼントをやっぱり用意しておくんだった。
　去年、キャロルに送ったプレゼント(確か銀のネックレスだったような気がする)でキャロルがアレルギー発作を起こしてしまい、救急車で運ばれる羽目になってしまった。急に金属アレルギーになったものだから、俺は慌てていた。仕事仲間のジェームズがいてくれたおかげで何とかなったものの――。

　この日以来、クリスマスプレゼントを準備するかしまいかを考えるようになってしまった。

　キャロルがまた救急車で運ばれるような、もしくはそれ以上の大事になってしまったら――？

　俺は助けられるのか？

　キャロルが俺を嫌いになってしまったら――？

　これ以上キャロルを傷つけることが俺に出来るのだろうか？
　俺は鉛に引っ張られ深い悲しみの海に沈んで、生涯を終えるまで光のない深海の中で暮らすことになるだろう。

　プレゼントを考えるたびに、あの日のトラウマが脳内で再生されて精神的に追い詰められる。



　車を走らせ十分ほど経った。何故かわからないが、車内は静まりかえっていて瞬きと呼吸だけを許されたような空気だった。首を突っ込んだらいけない話題もなかったし、犬猿のムードもこれっぽちもなかった。だが、甘美なものでもなかった。俺達ふたりとも、口を閉じて茫洋とした雪景色を眺めている。

　そういえば、キャロルと俺というコンビで仕事に行ったのは何年ぶりだっただろう？ そもそも一緒に行ったことがあっただろうか。いつも顔を合わせている安心感があったものだから、忘れてしまっていた。イエローフォックスと書かれた標識が目に入った。少し都会になる。

　俺はキャロルと前方に交互に目をやりながら、微笑んだ。精一杯の表情だ。
「キャロル、この先にあるコンビニでコーヒーでも買おうか」
　キャロルは左眉毛をぴくりと上げて、俺を見たり前方を見たりを数秒繰り返した。
「何？ 貴方本当にロバート？ いつもはそんなこと言わないわ」

「いつもって？ 今日はクリスマスじゃないか」
　キャロルは肩をすくめた。

六→←四

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