命にキスを 〜アウトローな未来のお話〜

三十五　ロバートのクルーザー ページ35

朝陽に照らされた漆黒のバイクには、既にキーがさしこまれていた。エンジンをかけ、股を開いて乗り込む。座り心地が良い。異常なほどにお尻にフィット感を覚える。


　国道を走って、一度聞いたことがある生き屋に向かった。バイクレースをやっているのはブルータウン四丁目の中央通りだが、ロバートが営んでいる生き屋は同じダウンタウンのサンミドル住宅街だ。個性豊かで統一性のない家が建ち並んでいる。


　サンドミドル住宅街についた頃、腕時計は十時を少し過ぎた所だった。速度を落として、バイクに乗ってゆっくりと辺りを見回す。
　治安の良さそな所で、街路樹は綺麗だしゴミひとつ落ちておらず、カビ臭くもなかった。アミーゴブルーに輝く青空がそれを引き立てている。

　イキイキとしている住宅街だった。
　子供は学校に行き、父親は会社で働き、母親は家事をせっせとこなしている頃だろう。

　ロバートから教えてもらった家の特徴は、全部グレーで、一本の長方形が横たわっていて、もう一本の長方形は縦でしかも繋がっていて、窓はひとつもなくて、玄関のドアの色はオフブラックで、無難な車庫が右手に建っていて、何にもない芝生の庭があって、今にも飛んでいきそうな真っ黒に塗られたポストがあって――。

　だいたいのイメージをつけながら見ていると、三〜五階の高さを誇る家が建っている中で、ひとつだけ二階程度の四角形の家を見つけた。しかも灰色だ。
　他の家はガーデンや、ブランコや、クロームオレンジ色のペンキ等を使って派手に飾ってるのに、明らかに違う家が一軒。周りと浮いている。

　高い家が並んでいる中、凹んだ家は、地味だけれどシンプルだった。ペンキが剥がれていない所を見るとまだ新築なのかもしれない。

　バイクをその家に向け、ポストの所で一時停止。しっかり足をつけて、住んでいる人の名前に目を凝らす。


　“Robert＆Carol・rostant”
　(ロバート＆キャロル・ロスタント)

　“hendricks”
　(ヘンドリックス)

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