十一 キャロルの激怒 ページ11
キャロルはココリとコンビニにあった新聞を買占め、ダウンタウンへ向かう車の助手席であの記事を探していた。夜だというのに目を大きくして。キャロルの異常なほどの憤懣(ふんまん)は、誰もが近寄りがたくなっていた。俺は持ち帰ることになったコーヒーを片手に運転していて――さっきからずっと、手に持ったコーヒーは上下左右に震えている。俺はキャロルとフロントガラスをちらちら見ながら話しかけた。
「キャロル、あの……視力が衰えたり、酔ったりすることはないのか?」おそるおそる、小さな声で下からものを言ってみる。
「うるさい!!」
「そもそも、お前はどうするってんだよ。俺達は病院に乗り込めもしねぇんだぞ?」
「乗り込めない? はは、誰が決めたってのよ」
「決めるも何も。俺達は殺屋をだな」
「うるさい! 羊の胎盤と人間の受精卵を機械に放りこんだ馬鹿共をつきとめて、私がやってやるわ。クソ!!」
キャロルは握っていた新聞全部を下に勢いよく投げた。人間は頭に血が昇ると、誰の言うことも聞こえなくなくなってしまう。俺でも。耳がなくなったように。
キャロルは右肘でガラスを割ってしまうんじゃないかと思うほど強く叩き、ライオンヘアを掻き毟った。――新聞は皺々になっており、キャロルの膝元にたくさん落ちていた。しばらくの沈黙があった。
俺は平常心を取り戻し、キャロルの上下に激しく動いていた肩も治まってきた。そしてキャロルが何かの諦めの決意を含んだような、ゆっくりとした溜息をついた。俺はキャロルを一瞥した。
「もう、なにがなんだか……ごめんなさい」
「君がそういう風に怒る所なんて久し振りにみたよ」
「本当にごめんなさい」
「いや、いいんだ。君の気持ちもよくわかる」
キャロルは数秒目を閉じて、深呼吸してそっと目と口を開けた。
「もう七年も前のことだけど、私がiPS細胞スリーで子宮を作ろうとしてた時のこと覚える?」
「勿論。忘れるはずないだろ」
「そうよね……。私、死にかけたんだもの。一回、天国が見えたわ」
「確か、赤ちゃんのいるお腹を俺に撫でさせたかったとか言ってたよな」
「そう。だから自分で下腹部を開いて、子宮を作ろうとした。上手くいかなかったけどね。
iPS細胞スリーは自分のない臓器まで作れてしまう。それはすごく魅力的。ひとりの人間だって作れる。だけど、液体の量を間違えば正常なものにはならない。ずっと増殖し続ける」
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レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 椋香さん» 毎度、暖かい目でみて頂いて感謝しております。ロバート&キャロルシリーズは、キャラ設定の割にハードボイルドなお話なんですよね。かみ合わない所が俺的にはツボですが(苦笑) 椋香先生はこういう系が好みなのかな? また機会があれば楽しく書きたいです! (2015年6月7日 20時) (レス) id: e81dc0df4c (このIDを非表示/違反報告)
椋香(プロフ) - 読了しました〜。言われてしまうと、裏設定書き込んでほしくなります…。今回も楽しく読ませていただきました♪またこのジャンルにも挑戦してみてください!こんな未来にならないことを祈りつつ…。 (2015年6月7日 16時) (携帯から) (レス) id: 79a496978a (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - ふたまさん» 感想ありがとうごうごさいます(*´∀`) このお話は書き始める前から仕込んでいたネタだったので、そう言っていただけると嬉しいです。これからも頑張って書き続けます。ありがとうございました♪ヽ(´▽`)/ (2014年11月5日 22時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
ふたま(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!話が深くて超面白かったです…!書き方がお上手で憧れます(/∀\*)これからも頑張ってくださいね! (2014年11月5日 20時) (レス) id: fd0c711392 (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - 感想ありがとうございます!(*^^*) 改行は縦書きはなしで、横書きは幾つか入れた方がいいそうです。改行ない方が正しいと思っていて、この作品は入れなかったのですが、最近知って修正しました。描写についてはまだ改善案があると思うのでがんばります(><) (2014年7月24日 12時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナンシー・ハジェンズ | 作者ホームページ:
作成日時:2013年9月14日 23時