〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

…２ ページ7

 


「……さっき言っていたけど、高専には行かなくて済んだってことでいいかい？」

「そう」

 オレもビックリしたわ。話が通じる相手だと思ってなかった。と彼女は零(こぼ)す。

(悟――君は高専に浅上さんの事を報告しなかったのか？)

 そう思いながら、続けて話す彼女の声を聞く。


「九尾も祓(はら)わないで一応偶(たま)に見に来るって言ってただけだったわ」

 悟は浅上さんが呪霊に取り憑(つ)かれていると勘違(かんちが)いした。そんな取り憑かれてると思った浅上さんの事を放っておくわけが無い。

 浅上さんに取り憑いてる呪霊が悪さをする前に祓う。その為(ため)に浅上さんを捜(さが)すのは当然(とうぜん)だ。

 それなのに、そんな九尾を祓わないなんて、悟は何を考えているんだ。私はそう思考して彼女に訊(たず)ねてみる。


「浅上さん、五条悟は何故九尾を祓わなかったのか、心当たりはある…？」

「呪霊を飼ってるんじゃないかって思ってるって言ってたな。この地域で呪霊の被害(ひがい)がほとんど出てない事と、俺が人助けしてる事を知ってた」

「それで九尾に害が無いと判断(はんだん)したのか」

「一応人に危害(きがい)加えないか確認もされたわ」

「理解したよ」

 謎(なぞ)が解けた。呪霊だと勘違(かんちが)いはしてるままみたいだが、それでも九尾が害では無いと判断したらしい。


「それにしても人手不足の高専が呪術師と勘違いしているとはいえ、浅上さんを勧誘(かんゆう)しなかったのは不思議(ふしぎ)だよ」

「死ねないのを恐(おそ)ろしく思われても困るし、それを利用する仕事をさせられても困る。あと大学が終わるまで離れるつもりは無いって言ったら、気持ちは分かったから後は任せてって言ったわ」

 悟は無理強(むりじ)いをしなかったらしい。

 浅上さんが高専に行かなくて済んだことに安堵(あんど)するものの、これから悟と鉢(はち)合わせする可能性(かのうせい)に頭を抱(かか)えそうになった。



 

…３→←２話 独占したい気持ち

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す