〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

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 私は偽(いつわ)りのない言葉を伝(つた)える。

 少し、恐(おそ)ろしさがあった。拒絶(きょぜつ)されたら。という考えが過(よ)ぎったためだ。

(このまま、私のことを受け入れてくれたらいいのに)

 そう思うと同時に、今この瞬間(しゅんかん)、きっと彼女は私しか見ていないだろう。その事実に私は溺(おぼ)れそうになる。

 彼女は瞳(ひとみ)を揺(ゆ)らして、動揺(どうよう)しているのが伝わってきた。


「…………愛してる…？ 何言って――」

「今は分からなくていい。答えなくていい。だけど私の想いを知っていてほしい」

 私は微笑(ほほえ)みながら穏(おだ)やかに口にする。

 彼女をこのまま手の内に沈(しず)めてしまえればいいのにとも、このまま、私のことを受け入れてくれたらいいのにとも思う。その浅(あさ)ましさも、私の本心なんだろう。

 それでも、それはまだ早い。彼女の心が落ち着いて、整理がついてからでも遅(おそ)くはない。

 冷静に思考して、彼女の反応を見つめる。

 彼女は動揺して瞳を揺らしたまま、俯(うつむ)く。下に視線(しせん)を落とした。


「……本気？ って問うのは――無粋(ぶすい)か…」

 少ししてから、彼女はポツリとそう言葉を零(こぼ)す。

「愛してる――か。そんなの、家族以外に言われたのは初(はじ)めてだよ」

 そう、顔を上げて私を見ると言う。


「アンタ言ってたもんな。オレが人として好きだって。…オレとの時間が好きだって。安らぐって確か言ってたよな」

 動揺した様子は消えて、落ち着いた様子で私を見つめて口にする。

(そうだ。そうだった)

 そう思いながら、彼女は続けた。


 

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