〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

８話 夜が更ける ページ36

 


 黒いジャージの半パン、半袖(はんそで)の白いＴシャツを着て。ドライヤーで髪(かみ)を乾(かわ)かし、廊下(ろうか)を通って部屋に戻(もど)る。

「風呂(ふろ)ありがと…気持ち良かったわ」

「それならよかった。――私もそろそろ行ってくるね。浅上さんはもう寝(ね)る？」

 和テーブルを挟(はさ)んで奥(おく)に座ってるソイツは立ち上がりながらそう言う。


「……もう少ししたら寝ると思う」

「何かあったら遠慮(えんりょ)せずに言って」

 オレは頷(うなづ)く。和テーブルの上に放置してあるスマホを持って、敷布団(しきぶとん)の上に胡坐(あぐら)をかいて座った。

 襖(ふすま)の側(そば)まで行ったソイツが、浅上さん。と名前を呼ぶ。オレはその声にスマホから視線(しせん)を上げてソイツに向ける。

 優しい眼差(まなざ)しで微笑(ほほえ)みながら、おやすみ。と零(こぼ)したソイツに、静かな声で――おやすみと返した。







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 浅上さんと会う日以外だと寝る時のみ、私は袈裟(けさ)を着ない。黒いＴシャツに７分丈(たけ)の黒いスウェットパンツを履(は)いていた。

 髪を乾(かわ)かし終えて、自分の部屋に行く廊下(ろうか)の途中(とちゅう)にある彼女の部屋に着くと、安心して寝てくれただろうか。と思いながら襖(ふすま)を静かに開ける。枕元(まくらもと)に電気スタンドを置いて、オレンジ色のライトが点いていた。

 彼女が布団(ふとん)の上で体育座りをして膝(ひざ)に顔を付(つ)けて丸くなっていて。奈々子と美々子と似(に)ている髪型(かみがた)の彼女の髪が垂(た)れている。

 彼女が気配(けはい)を感じたのか、顔を上げて私を見る。


「眠(ねむ)れないのかい？」

 そう問えば、……まあね。と口にする。



 

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