〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

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 オレは立ち上がって、コンセントから充電(じゅうでん)しているスマホを手に取った。







『Aー！！！ 連(つ)れ去られたって本当！？！？ 大丈夫！？ 怪我(ケガ)とかしてない！？！？』

 夜の８時半頃(ごろ)。父さんから着信(ちゃくしん)が掛(か)かって来て、出るといの一番にそう言われる。

 連れ去られたと母さんには言ったけど、母さんがそうやって騒(さわ)ぎ出す父さんにそのまま言うとは思えない。


「連れ去られたって母さんが言ったの？」

『だってAは自分から夏油って男に付(つ)いて行かないでしょ！！ そしたら誘拐(ゆうかい)されたに違いないってなるよ！！』

 その言葉に案外(あんがい)父さんは頭良かったんだなと思った。まあ、美大の准教授(じゅんきょうじゅ)してるしあながち間違ってないんだろうけど。この親父(おやじ)が准教授？？？ と思った人がいたらオレと仲良くなれると思う。

「誘拐はあながち間違いじゃないけど、大丈夫。１週間したら戻(もど)るから。……今週は会いに行けなくてごめん」

『そんな事はいいよ！！ 怪我してない！？ 無事(ぶじ)なんだよね！？』

「母さんから聞いてるでしょ。オレは何ともないし、大丈夫」

『菖蒲(あやめ)には止められてるけど、嫌(イヤ)だったら俺が迎(むか)えに行くから！！』

「明日も仕事でしょ」

『仕事だけど…それでも！！ 終わったらすぐ迎えに行くから！！』

「大丈夫だから。アイツも１週間だけって言ってる。大丈夫だよ」

『でも！！ 俺心配だよ！！』

 父さんは心底(しんそこ)心配してくれてるんだろう。その気持ちは嬉しいけど、アイツの気持ちも無碍(むげ)に出来(でき)ないオレは落ち着いた声で答える。


「何かあったら自力で帰るから。九尾もいるから大丈夫だよ」

 心配かけてるのは分かってる。でもオレは大丈夫だから。と父さんに言う。


 

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