〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

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(――――……)

「許(ゆる)してもらえるとは思っていないさ。――でも、本当に君に危害(きがい)を加えてしまった事は仕方(しかた)なかったとはいえ、謝罪(しゃざい)の気持ちで一杯(いっぱい)だ」

 ギュッと、ソイツはオレを抱(だ)き締(し)める力を強くする。

 その声は、暗い。その言葉に偽(いつわ)りは無いんだろう。それなら、オレは――――

「…服とか、充電器(じゅうでんき)とかどうするわけ。生活費も家だけど」

 すると、身体(からだ)を少し離してオレを見下ろしながらソイツは答える。


「スマホの充電器なら今買いに行かせているよ。安心して。――コレは私のワガママだ。後で服や必要な物は私持ちで買いに行こう。生活費も気にしなくていい」

「……いや、普通(ふつう)１週間も１人分の生活費諸々(もろもろ)が増えたら大変(たいへん)だけど」

「私は金には困っていないからね」

「金持ちなわけ」

「そんな感じだね」

 オレは下を向いて、ソイツの着てる黒い長袖(ながそで)の衣服(いふく)に視線(しせん)を落とす。

 充電器があるなら電池が無くなっても母さんと父さん、神代(かみしろ)先生に、嫌(イヤ)だけど白髪青眼(はくはつあおめ)とも連絡(れんらく)がつく。

 必要なモノも衣服も生活費もコイツ持ちなら何も心配は要(い)らないだろう。
 
 そう考えた末(すえ)に、オレは口を開く。


「……１週間」

 １週間だけだからな。とオレは声を通した。

「ここにいてくれるのかい？」

「１週間だけだから」

 そう言えば、ありがとう、浅上さん。とソイツは優しい声で口にする。そしてもう一度オレを抱き締める――



 

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