〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

…４ ページ14

 


 九尾のおかげで痛みは無くなってるけど、こんなトコに連れて来て何のつもりか甚(はなは)だ疑問(ぎもん)だわ。そう思っているとソイツは現(あらわ)れた。
 
「美々子、それに菜々子もありがとう」

 さっき呼びに行った子供が開けて行った襖(ふすま)から、そう言ってソイツが入って来る。

「テメェ、どういうつもり。オレのウエストポーチはどこやった」

 オレは立ち上がってソイツをキツい目で見ながら言う。


「ごめん、浅上さん。手荒(てあら)な真似(まね)をしてすまなかった。そんなに警戒(けいかい)しないでくれ」

 ウエストポーチは私が預(あず)かっているよ。後で返すから安心して。とソイツが口にする。

「今すぐ返せ。大方(おおかた)オマエの家か何かだろうけど、こんなトコに連れて来て何のつもり。誘拐(ゆうかい)だけど」

 そう言えば、夏油様…と零(こぼ)す茶髪(ちゃぱつ)の子供。


「大丈夫(だいじょうぶ)。私が悪いんだ。彼女に危害(きがい)を加えたのは私だから」

 そう言って、ソイツはその子供の頭を撫(な)でる。

「目的は？」

「本当は浅上さんの同意の上で連れてきたかったんだ。でも、浅上さんは頷(うなづ)かないだろう？ だから強硬手段(きょうこうしゅだん)に出たのさ」

「だから目的は何」

「君を独(ひと)りにしたくなかっただけだよ」

「――は？」

「君が独りで悩(なや)むなんて考えたくもなかった。それだけだよ。手荒な真似をしたのは本当に悪かったと思っている」

「……"アンタ"には関係無い」

「もう忘れたのかい？ 手荒な真似をして説得力(せっとくりょく)が無いとは思うけど、私は君が大切なんだ」

「……。嫉妬(しっと)されてるけど」

 子供２人のオレを見る顔が羨(うらや)ましさを漏(も)らしていた。


「もちろん、菜々子も美々子も私にとって大切だよ」

 黒髪の子が立ち上がってソイツの近くに行く。２人の頭をソイツは撫(な)でた。



 

 

…５→←…３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す