2 ページ9
――あれ、ここにもAはいないなぁ。
今日最初の授業中、リドルとジェイドはこの声を聞いて勢いよく地面から顔を上げた。
魔法薬学で使用するマンドラゴラを採っていたところでE組の誰でもない声が聞こえてきた上に、更にはAの渾名であろう名前が呼ばれたからである。
しかし周囲を見回しても不審者の姿はなく、彼らは首を傾げながらも授業に戻った。
＊＊＊
所変わって
授業をサボっている最中であるフロイドが目的なく散歩をしていたところ、唐突にこんな声が聞こえてきたのである。
――うーん、Aは動物が好きだから馬小屋に来てみたけどハズレか。
――何処にいるんだろう、あの子。
A、というのはAの渾名だろうと簡単に関係性を繋ぐことの出来たフロイドは歯をガチりと噛み鳴らした。
嫌悪感と焦燥が身体の奥から湧き上がってきた為、彼は脇目も振らずに一年B組の教室へと駆け出したのである。
＊＊＊
――A相手に隠れんぼとか勝てる見込みなさすぎ。
――でも探さないとなぁ、Aを連れて帰らなくちゃ。
この科白を聞いたレオナは眠りの世界から急速に浮上し、冷や汗をかきながら飛び起きた。
呼吸が激しく乱れ、指先が僅かに震えている己に嘲笑を浮かべたその時、すぐそこの花壇の目の前に立っている男が視界に入り込む。
匂いもしない、気配もしない、音もしない、なのに確かに存在している男に薄気味悪さしか感じることが出来なかった。
――Aちゃん、AAちゃん、キミは一体何処にいるのかなぁ？
――Aがいないと仕事は溜まるし、信長は機嫌悪いし、俺もやる気出ないから……早く戻って来てもらわないと。
｢あ、レオナさんいたいた。またサボってるし……ほら、起きて授業行くっスよ｣
｢ッ、ラギー！｣
｢えっ！？ いきなり何なんスか！？｣
｢今すぐAを探し出せッ！！｣
瞳孔をかっぴらいたまま叫び、そのまま何処かへと駆け出して行ったレオナの背中を呆然と見つめていたラギーであったが、彼のあの焦りようは只事ではないと悟る。
すぐさまスマホを取り出すと、Aと同じクラスであり、尚且つ仲の良い後輩のジャックへと電話をかけ始めた。
それと同時に植物園を飛び出し、ラギーは本校舎とは別方向にある厩舎へと向かう。
｢よく分かんねぇけど……！ はっ、Aに何か起こるかもしれねぇなら、どんだけでも駆けずり回ってやるっスよ！｣
そう意気込んだ次の瞬間、ジャックとの通話が繋がった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1934人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神桜佳音(プロフ) - ゆるりさん» わざわざありがとうございます！更新楽しみにお待ちしておりますね！ (2020年6月13日 12時) (
レス) id: 8032f2476b (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 咲桜さん» こちらこそ素敵なリクエストありがとうございました！ (2020年6月2日 22時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
咲桜(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございました！和歌のチョイスも素敵でした！ (2020年6月2日 21時) (レス) id: cb464004df (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 神桜佳音さん» そっちもありましたね！ 何となく思い浮かんだ歌を書いてたので……くっ、そっちでもよかったのに……！！ 後で出させて頂きます！ (2020年6月1日 23時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - こんばんは！いつも楽しく読ませていただいております！最新の更新の話で百人一首が出ておりましたが、君がためで、監督生君は春のに続けたのでしょう？おしからざりし命さえもあったのでは…？と思ってコメントしてしまいました！更新応援しております！ (2020年6月1日 22時) (レス) id: 06bd6db604 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆるり | 作成日時：2020年5月18日 1時
