2 ページ49
pattern 2
｢A、ちょっと頼みたいことがあるんだが聞いてもらえねぇか？｣
｢如何なされました、ジャックさん｣
｢実はな……｣
真面目なジャックから授業中に話しかけられたことを珍しいと思いつつ、Aは彼の言葉に耳を傾ける。
そのお願い事の内容とは、無理が祟ったことで風邪をひき、熱を出してしまったラギーの看病をして欲しいというものだった。
当たり前だがレオナには頼めないし、流石にジャックも付きっきりで看病は出来ない。
それに加えて、ラギー自身がジャックかA以外に弱味を見られるのは嫌だと言い張って聞かないのだ。
｢Aには悪いんだがよぉ｣
｢いえ、構いませんよ。一度寮に戻ってからそちらへ向かいますね｣
｢ありがとうな、助かる！｣
耳をぴんっと立たせ、嬉しさを前面に押し出しながら笑ったジャックに対し、トレインから途轍もなく鋭い睨みが飛んできた。
＊＊＊
体は丈夫だと自負していたラギーであったが、きっと疲労には敵わなかったのだろう。
彼はベッドの上で顔を赤らめ、はふはふと苦しそうに呼吸を繰り返し、眉間に皺を寄せながら熱さに耐えている。
｢大丈夫だよな……？｣
｢こちらの病気にあまり詳しくありませんが、診たところ普通の風邪でしょうね｣
氷水を入れ替えてくると言って部屋を出ていくジャックの背を見送ってから、Aはラギーの首筋に伝う汗をタオルで拭った。
寮全体が乾燥しているせいで額のタオルの乾きも早いし、何より喉がカラカラになってしまう。
適度に水を飲ませたいのだが、流石にA一人でラギーの体勢を起こし、吸呑器を口に運ぶのは至難の業なのだ。
ジャックが戻ってくるまで我慢してもらおうと考えた直後、ラギーがうっすらと目を開けた。
｢……A｣
｢お目覚めですか、ラギーさん。どうなされました｣
｢のど、かわいた……水のみたい｣
｢分かりました、少々お待ちを｣
ラギーの背中に腕を回し、何とか体を起こさせてから吸呑器を手に持ち、口元へと運ぼうとしたその時、いきなりラギーに右手首を掴まれた。
そのまま強引に引き寄せられたことによって吸呑器は床に転がり、ラギーとAの唇同士がぶつかり合う結果となる。
その際、彼の歯によって唇が切れてしまい、ぷくりと鮮血が浮かび上がった。
｢みず……あれ？ みずじゃ、ない？｣
ぺろりと舌で唇を舐め上げられ、思わずAは硬直してしまう。
その後、戻ってきたジャックによって無事に彼女は回収されたのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1885人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆるり(プロフ) - ゆゆ。さん» 黒執事好きですよ！！ ハムレットが出てくるんですか……！？ 漫画の購入が途中で止まっていまして……笑 近々揃えてちゃんと読んでみます！ でも！ 黒執事は凄く好きです！！！ (2020年8月20日 1時) (
レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ。(プロフ) - 凄く面白いです！(前の作品にコメごめんなさい…)ハムレットって黒執事にも出てきますよね…！もしかして作者様黒執事好きだったりしますか…？私的にはハムレット出てきて嬉しかったです（笑） (2020年8月19日 16時) (レス) id: ead64206de (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - マツリカさん» こちらこそリクエストありがとうございました！私もクルーウェル先生大好きなので書いていて楽しかったです！ (2020年5月22日 6時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
マツリカ(プロフ) - クルーウェル先生のお話ありがとうございました！！一生の宝物にしますうううつ！！！！ (2020年5月22日 6時) (レス) id: 88d493ffab (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - えむさん» こちらこそありがとうございました！ 勿論、リクエストは受け付けております〜！私でよければまたどうぞ！ (2020年5月21日 16時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆるり | 作成日時：2020年5月3日 19時
