聞こえますか、この声が。 (ページ44)

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ep.44 ページ44

藤原side

パサッ

少々苛立たしげに、資料を俺の前に投げ捨てたリチャ。

俯いて何も言わない古謝。

部屋には3人だけ。

「確かに。おかしいとは、思ってたんや。

大勢相手ならともかく、お前の戦闘能力で、政府の兵隊一人に腹に2発も撃ち込まれるなんて。」

押し殺したような古謝の声に、リチャが続く。

「確かに、あの日まとくんの死体は上がらんかった。でもなぁ、丈。確証が足りん。」

「わかってる。全て推測の域や。だから、お前らだけに伝えようと思った。

襲われた直後は、考えもつかんかった。

だけど、長尾に稽古をつけてて思い出した。

敵の背中を取る方法。

一番最初に、この教会で、まとくんが俺に教えたことや。」

あの日、俺を襲ったやつの特徴。

煙草の匂い。

それ以外に

俺の戦い方を知っているかのような、動き。

なんども、頭の中で消し続けた推測がもしも正解だったのなら。

全ての辻褄が合う

だけど、もしもそれが本当の真実だったなら

「でも、もしも本当なら。裏切り者はまとくんやったって事になるんやで？」

「そんなんおかしいやん。2年前、計画を立てたのは丈やったけど、俺らをまとめたのはまとくんなんやで？？裏切って計画を破綻させて、まとくんに何の得があるんよ」

「.....スラム街の崩壊が目的なら、辻褄はあう。」

「んなアホな...。まとくんは、ここで育ったんやで...。」

古謝の眉間に皺が寄っていく。その目から涙が溢れる前に、古謝は俺から顔を背けて壁を向いた。

「それから、もう一人。」

そう、俺が口にすると、リチャは珍しく声を荒げた。

「晶哉の事は、俺らでなんとかする。まだ、戻れる！あいつは、絶対に俺らを傷つけたりはせん。」

「情報があんねん。お前やってアホやないんやからわかるやろ？裏切り者はこの街にいらん。」

「お前こそ、まとくんの死体が上がらんかったからって、まとくんが裏切り者って事にしたいだけちゃうんか？」

リチャが俺の胸ぐらを掴む。

その瞬間

ガシャーン

ドアの外から聞こえた、何かが割れる音

その音の主は茫然とした表情で、立ち尽くしていた

「今江....。」

割れたコップの破片が床に散らばる

俺らの心を映すように、割れたコップから溢れた麦茶が、教会の古びた床に染みを作った。