第45話 ページ49
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「Aは、マフィアを選んだ」
其の言葉に私も改めて自覚をする。
横浜の闇を取り仕切る凶悪な闇組織ポートマフィア。
つい数刻前に、私が忠誠を誓った組織。
私の能力の本質を知る三人は理解している。
此れが最も正しい選択であると。
「探偵社には渡さねェよ」
張り詰めた空気に探偵社の二人の表情が険しくなる。
其の空気を読まず、ほぅ、と感嘆の吐息を吐いた私に意識が向いたのが分かった。
三色の瞳が、丸くなる。
「いえ。贅沢な空間だと思いまして」
私さえ居なければどれだけ絵になることだろう。
小説の挿し絵どころか、表紙だって飾れる。
「私は仕事の準備を整えて参ります。中原さんはごゆっくりどうぞ」
朝早くから外で待っていたのだから、何か重要な話があるのだろう。
探偵社の頭脳と、マフィアの幹部の話を私情で長引かせていたことに反省する。
護衛役の敦くんが離れていることに疑問は残るが、其れだけ重要だと思えば違和もない。
頭を下げ、其のまま踵を返しかけた私は肩を掴まれて一回転することになる。
「張本人が何処に行きやがる」
「私の話ですか?」
「今の今まで何を聞いてやがった…」
太宰さんは可笑しそうに笑っているし、乱歩はまたむくれている。
中也は呆れたような、残念な子を見るかのような目をしていた。
「私がマフィアに正式に属したと云う報告は終わりました。後日、探偵社には個人的に伺います」
探偵社との合同の作戦でもあるのだろうか。
ボスからは、下で探偵社が待っているとしか聞かされていない。
此の二人に私が嘘を見破る、若しくは吐くための要員で居るのならば無駄のような気がする。
「此れ以上、私情で長引かせるわけには参りません」
乱歩と太宰さんは顔を見合わせる。
中也だけは怪訝そうに口を引き結んだ。
「武装探偵社とポートマフィア、
だからこんなに朝早くから、と続けると中也ががっくりと肩を落とす。
「A」
「何でしょう」
首を傾げて見せると、中也は暫く私を見詰めて息を吐いた。
まぁ良い、と短く呟いて私より先に踵を返してしまう。
「行くぞ」
「…はい」
背中に返事をして、歩き出す前に足を止める。
振り返ると二色の瞳が私を射抜いていた。
「下手くそ」
「嘘が苦手なもので」
「嘘つき」
「あは……何を今更」
貴方達は
私が嘘つきで、わざと分からない振りをしたことぐらい。
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時