居酒屋妄想日記 ３冊目

７人目 ページ8

〆．リクエスト



「おはようございます！」



橙「おはよー！」



今日もバイト一番乗り！



……一番乗りはいいんだけど、早く来すぎた。



橙「バイトまで時間あるし、お喋りしよか？」



「ふふ、はい！」



お客さんもあまり来ない曜日。



開店はしてるけど、のーんびりお喋りタイム。



「この前、照史さんにそっくりな雲見つけたんですよ！……ほらっ」



橙「はあ？そんな雲あるわけ………似てるっ！？」



「あ。照史さん髭生やしてるんですね？」



橙「今更！？」



「お似合いですよ！ダンディーな雰囲気醸してて！」



橙「雰囲気醸してるだけなん！？ありがとうやけど！」



楽しいやりとり。



照史さんといたら、飽きないな。



自分が軽くボケてるだけなんだけど、照史さんのツッコミで面白く感じてしまう。



「照史さん面白すぎですよ…っ」



橙「いやいやいや、Aがボケてんねんで！？」



お腹を抱えて笑っていると、照史さんは急に黙り込み、私の顔をじっと見てきた。



「………？どうかしました？」



橙「いや…………好きやなーと思ってさ」



「す、き？」



橙「そうそう。俺、Aのこと。好きやなって」



優しい眼差しは私に向けられたままだ。



「それは……恋愛的なやつですか」



橙「恋愛的なやつ。ごめんな、困らせるってわかっててんけど」



「いえ………」



………全員、だ。これで。



はまちゃん先輩の言葉を思い出し、顔が熱くなった。



人生最大のモテ期というやつだ。



橙「まあ………Aは鈍感ちゃんやから気付いてないんやろけどさ。Aな、いつもいつもずるいねんで？」



「ずるい？」



橙「Aの何気ない一言に、全員ドキドキしてる。心揺さぶられっぱなしやねん。ほら、思い出したくないやろうけどさ、ストーカーの…」



「はい…」



橙「あん時、Aは俺のこと大切な人って言うてくれたやん。もう、あの一言は効いたわ……Aが思うよりも俺、Aに惚れてんで？」



こんなにストレートに言われて。



……恥ずかしくならない方がおかしい。



「私………」



でもどうしてか、照史さんまでも。



付き合って、とは言わないんだ。



７人に「好き」と言われ、私は戸惑う以上に嬉しかった。



じゃあ、７人に「俺と付き合って」と言われていたら？



きっと困ってしまう。



………そんな性格を、うえすとのみんなにバレていたのかもしれない。



〆．

髪色、恋心→←ミニスカート 桃side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す