居酒屋妄想日記 ３冊目

一人にしない約束 緑side ページ4

〆．



『怖がらんといてぇや！別に怒ってないし！寧ろありがとうやん？』



緑「は、はあ」



『それに、将来の弟かもしれんし！あ、年齢的には逆か……』



胸が高鳴る。



確かにそうなったらええなぁとは思うけど。



『Aの話によう出てくるから、脈アリちゃう？智洋先輩、やんな』



緑「あ、そう、神山智洋……」



そうなんや、俺の話してくれてるんや。



嬉しくて頬が緩んだ。



『西畑大吾です。ちょうどええわ、智洋くんなら信頼できそうやし頼んでもええ？』



何を、なんて野暮なことは聞かない。



『Aのこと』



きっと、俺の予測は正しいんやと思う。



『まずうちの事情から知っといてもらわなな？うち、父子家庭なんよ』



そこから続く言葉は、Aの寂しさを想像するにはあまりにも充分すぎた。



Aは、寂しかったんや。



この家で。



一人ぼっちで。



『まあ……自分も家出てもたから言えた義理やないんやけど。Aを一人にせんといてほしいんです』



改まった口調に、背筋が伸びる。



『Aがめっちゃシフト入れてんの、一人やと寂しいからやねん。みんなが、心の支えやねん。ほら、大学の友達はなかなかこっち遊びに来やんし』



大事な役目を任されてるんや。



緑「……もちろん、Aのこと、絶対一人にしません。他のバイト仲間も、そう言うはずやし…」



『やろうなぁ……みんなAに惚れてるんやんね？』



バレてるわ。



かなわんなぁ。



兄妹やのに、人の気持ちの察しの良さが真逆。



『ほんなら俺が言うことはないな。またたまに帰ってくるし。



……智洋くんの手作り料理食べて、風呂入って、寝て起きてまた出かけるわ。てことでめっちゃ美味いのよろしくな♡』



緑「任せといてや！」



Aが褒めてくれただし巻き玉子。



いつも美味そうに食べてるメニューを想像して、



軽く作るつもりがたいそうなことになってしまった。



『ふはは、三人でも食べきんのむずそ。いただきまーす。……んまー』



ふにゃっと笑った顔がAにそっくりや。



俺もつられて笑った。



『俺は智洋くん推しやな！他のバイト仲間さんに負けへんでな』



緑「………おおきに！もちろんやで！」



もとよりそのつもりや。



〆．

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