居酒屋妄想日記 ３冊目

ごめんなさい ページ16

〆．



橙「………つまり、Aは七人が好きと」



「はい」



翌日、照史さんのオススメのお店へご飯を食べに行った。



私がソワソワしていたことに気づいた照史さんが、優しく聞いてくるもんだから、



意を決して気持ちを打ち明けた。



橙「そっかぁ……七人、ね」



照史さんは、受け入れてくれなさそう……？



思案顔の照史さんを見ていられなくて、自分の手元に目線を移す。



橙「それは、妬いてまうな」



「……や、く？」



橙「そらそうやん？俺だけ見ててほしいってのは、当然の欲求や」



あ、目が合った。



でもその目は思っているより優しくて、少し安心した。



「まあそうですよね………私もそうです。好きな人が、私以外も見ているなんて……」



橙「ほんで、今のところ打ち明けてる三人は、受け入れてくれてんねやな」



「あ、はい。……他の人よりも好きにさせる、みたいなことを………」



橙「言いそー……めっちゃ言いそうやわぁ……」



はああ、とため息をつくから、怖くなる。



「………照史さん、ごめんなさい」



橙「ん？」



「照史さんだけを選べなくて、ごめんなさい」



橙「………………」



照史さんだけじゃなく、みんなにも申し訳なさがある。



特に、照史さんや淳太さんやはまちゃん先輩は結婚も視野に入れる年齢。



一人を選べない人間と関わってる場合じゃないだろう。



「呆れましたよね。………嫌われても当然だと思います」



橙「ちょちょちょ、待ってや。いつ俺がそんなん言うたん」



「いや……でもそうなりませんか？」



橙「ならへんよ！寧ろホッとしてるし」



………ホッとしてる？なんで？



橙「はは、キョトンとしとるなぁ！振られんくて安心したんよ。俺だけが選ばれたわけでもないけどな」



「振るなんてとんでもない…！」



橙「んん。………なんせ俺、Aと初めて会った時から目ぇ付けてたし！」



「だから即採用？」



橙「いや、それはまあ、人手が足りんいうんもあったけどさ」



もごもご。



「…………ふふ。良かった。照史さんが私のこと気にかけてくださったおかげで、私今、幸せです」



私を採用してくれた照史さんには感謝しなきゃ。



橙「………ほんま、ずるい子やわぁ」



「？」



橙「Aは一回、俺らの立場になってみてもええんちゃう？ドキドキでキュン死するで」



「ええ！？」



なんで！？



〆．

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