episode 8:知らないもの、知らない痛み ページ10
カルデアに戻ってきた頃、丁度夕食時のようで、食堂からスパイスの匂いが漂ってきた。
ここでは朝・昼・夕食の時間が決まっており、マスターをはじめ職員、サーヴァントもこの時間は食堂に集まるらしい。
私も夕食に誘われたが断った。しかしマスターがどうしてもと言うので仕方なく食堂に向かった。
出されたのはご飯に大きく切られた肉や野菜が入った茶色いものがかかったもの。
一口食べるとスパイスの辛味と具材の味が口の中に広がった。
黙々と食べていると隣にいた槍兵が口を開いた
「なぁ、前から気になってたんだけどよ、なんでこ俺やアーチャーのことを槍兵、弓兵って呼ぶんだ?」
「貴方達は何故かは知りませんが同じ名前の方がいるでしょ?特にクー・フーリンと名のつくサーヴァントはあと3人もいる。まぁ単なる区別です。ところで赤い弓兵、これはなんというのですか?」
「カレーだか…君、初めてだったのか」
その言葉が何故か胸に突き刺さって頭の中で反響した。
そう、初めてだ。カレーなんて食べ物の匂いも、熱さも、味も。何も知らなかった。
生前は料理とは程遠い、携帯食で腹を満たしていたのだから。
「…えぇ。生憎と料理とは縁のない身でしたので」
食器を片付けてご馳走様でした。と一言言って私は自室に戻った。
胸の痛みはまだ癒えない。
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時