last episode:大切な時を最後の日まで ページ40
「随分立派な誓いだな」
肩が自分でもわかるくらい飛び跳ねる。後ろから声をかけたのはあの青い槍兵だった。
「飯ができたってんで呼びに来たぜ……って、なんでそんな赤くなってんだ?」
「いや……あれを聞かれていたと思うと大分恥ずかしくて……」
「何言ってんだ。誓いってのは聞き届ける奴がいて成り立つんだよ。運が良かったな。坊主も寝ててただの独り言になる所だったその誓い、ここの連中を代表して俺が聞き届けてやったぜ」
「まぁそれはともかく、坊主は俺が起こすからお前は先に食堂に行ってろ。今日はお前の好きなアレだとよ」
アレとはまさか……カレー……!あの香りと味を思い出すといてもたってもいられなくなった。今すぐ行かなくては。
部屋を出ようとする私を呼び止めて槍兵は言った。
「A、またよろしくな」
「!……はい!」
その時の足取りはとても軽いものだった。
食堂に着くとカレーだけでなく和食を食べている人も見受けられた。
「……あの、今日はカレーと聞いたんですが……」
カウンターで声をかけると手の空いたらしいブーディカさんが応じてくれた。
「あっオロチ……じゃなくてA!うん今日はカレーだよ。けど本当は和食の日だったからそっちも出してるんだ」
まさか私が来たから途中でカレーに変更させてしまったのか……そう思うと申し訳なさが込み上げてきた。
「そんな顔しないで。これから色んなものを食べる機会があると思うけど、今日はとりあえず好きな物食べてから、お腹に余裕があったら別のものに挑戦してみたらどうかな?因みに和食のおすすめは焼き魚定食だよ!」
「!そうですね。ありがとうございます!」
それからの時間はとにかく忙しかった。貯めていたという種火をあるだけ食べさせられ、種火補充の周回に参加し、夜は酒好きなサーヴァントと飲み比べをした。とても忙しくて、とても充実した1日だった。
自室に戻った今も興奮が冷めていない。この調子だと明日まで起きていられそうだ。
こんな日々もいつかは終わってしまう。こんなことをしているが今も戦いは続いている。戦いが終わる時、私達はここを離れなければいけない。いつまでもこの世に留まっていられないのだ。
「次の別れの時は、笑顔でいられたらいいな」
なんて、そんなこと考えるにはいくらなんでも早すぎるか。
とにかく今は必ず来る別れの時のために今日のような時間を大切にしていこう。
そんな思いを胸に私は瞼を閉じた。
_Fin
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時