episode 36：誓い ページ39
｢サーヴァント､キャスター｡名をオロチと申します｡以後お見知りおきを､マスター｣
最初の日と全く同じ挨拶をする｡少しの沈黙の後､彼は戸惑っているような様子で口を開いた｡
｢あっ……初めましてオロチ｡俺の名前は___｣
｢知っていますよ､立香｣
今度は目を丸くしてこちらを見つめる｡サーヴァントが前回の記憶を持って現界するなんてごく稀なのだから驚くのも当然だ｡
｢全部覚えています｡貴方の事もカルデアの皆さんのことも｡……一度立香と呼んでみたかったのですが､やっぱりマスターと呼んだ方がよかったですか?｣
｢いやっ全然!ほら､俺マスターなんて呼ばれるような奴じゃないし､寧ろそっちの方が良いな｡……俺もこれからAって呼んでいい?｣
｢はい､勿論……!｣
｢よかった｡改めて､これからよろしく___｣
言葉と同時に差し出された手は空を切り､代わりに立香がこちらへ倒れ込んできた｡
｢立香!?どうしましたか!?弓兵!立香が……｣
｢大丈夫……ちょっと力抜けただけだから｣
｢やはりパスをカルデアに繋げているとはいえ､正式な召喚はまだマスターには厳しかったか｡もうすぐ昼時だ｡食事の用意ができるまでマスターを部屋で休ませてくれ｣
｢分かりました｡立香､私につかまってください｣
｢!あの……これはちょっと___｣
言い切る前に立香を抱きかかえて彼の部屋へ向かった｡
立香をそっとベットに寝かせる｡道中何か呟いていた彼も今は規則正しい寝息を立てている｡
その安らかな寝顔に強く惹かれて､気づくと私は彼の髪を撫でていた｡
｢……また喚んでくれてありがとうございます｡あの時私の宝物を貴方に預けて良かった｡お陰で私は"A"としてまたこの場所に来ることが出来ました｡｣
｢二度あることは三度ある､と言いますが､きっとこんな奇跡はもう起こらないでしょう｡だから､貴方とこのカルデアに誓います｡この先どんな厳しい状況になっても決して自分を犠牲にせず､出来うる限りの手段を講じ､貴方の､カルデアの､そして新しく生まれた私の為に､最後の時まで尽力します｣
その時の立香の表情は不思議と微笑んでいるように見えた｡
last episode：大切な時を最後の日まで→←episode 35：底からの浮上
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：巳月 要 | 作成日時：2017年12月25日 22時
