【FGO】人に成る (ページ38)

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episode 35：底からの浮上ページ38

自分自身と話をつけ元の1人になった私は､まるで思念体のような状態で海底都市を漂っていた｡

体の形がわからない曖昧な状態｡英霊と呼ばれようが所詮はただの霊体でしかないと否が応でも実感させられる｡頭の中も曖昧で､記憶がこの海に溶けていくような感覚を嫌悪した｡理由は分からない｡けれどこの記憶は手放したくないと心が言っている｡

それでもただ漂っていた私の耳に誰かの声が入ってきた｡少し幼い､けれどとても凛々しい少年の声だ｡

声に誘われるように私はどんどん水面を目指して上がっていく｡差し込む光が私を形作り､そして私を誘う声を鮮明にしてくれた｡

___告げる汝の身は我が元に我が命運は汝の剣に

形の戻った手足で更に上を目指して泳ぐ｡差し込む光は強くなり､更に記憶までも鮮明にしていく｡

思い出した､何故この記憶を手放したくなかったかを｡あの場所は､彼は､私を人にしてくれたんだ｡

彼が､皆がいたから､機械のようだった私は"人に成れた"んだ｡

___汝三大の言霊を纏う七天抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ!

｢___はい､今行きます___!｣

掴み取った光に包まれて､私はまたあの場所に降り立った｡