episode 34:召喚の儀 ページ37
その後特異点は無事に修復され、立香達はまた次の特異点に備えての休息に入っていた。
別に葬式の様な雰囲気になっている訳では無い。寂しくなると口にした者もいくらかいるが、大半は聖杯戦争を経験した英霊だ。口にしただけでその後は皆普段通りにしている。
その中立香だけは気持ちが晴れなかった。
今まで何度も戦闘で仲間を失ったことはあったが、カルデアに戻れば皆ケロッとしていた。空いた1人分の穴が大きく感じるのはその状況に慣れてしまっていたからかもしれない。
気づいたら彼は召喚サークルの前にいた。もしかしたらまた来てくれるかもしれない。そんな期待をして何度か召喚をしてみた。
彼女は結局来なかった。未だ晴れない気持ちのまま彼はまたふらふらと歩き出した。
「なら正式な英霊召喚をしてみるといい」
たどり着いた食堂で事情を聞いたエミヤが皿洗いをしながら言った。
「あの時君が受け取った彼女の結紐、あれを聖遺物として触媒にすれば間違いなく召喚が出来る」
「でもちゃんとした英霊召喚って、1人分の魔力供給だけでもすごく魔力使うんだよね。だからカルデアの召喚システムがあるんだってダ・ヴィンチちゃんが言ってた」
「その事でしたらお任せ下さい」
彼の後ろからディルムッドが声をかけた。
「以前聖杯戦争で召喚された際、マスターではない別の方と魔力供給のパスが繋がっていました。当時聞いた方法でなら、パスをカルデアに繋げることができるかもしれません」
立香の表情が少し晴れてきた。最後にもう一度と、彼は結紐を取り出した。
「やろう。頼んだ、ディルムッド」
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時