episode 30:怒りと決意 ページ33
眠りに着いたお祖母様の体は瓦礫を退けた瞬間再生を始めた。完全に器が壊れないようになっているらしい。
抱えてみると記憶にある彼女より小さく感じた。いや、私の体が当時の何倍にもなったせいだろう。体重も怖いくらいに軽い。
一方からこちらに近づいてくる足音が1つ。真っ直ぐ見据えるために私はお祖母様を無害な芝生に寝かせ、羽織で頭からつま先までを覆った。
「お祖母……様……?」
駆けてきた足を止め、力なくこちらに歩んでくるオルタ。その目に私は映っていなかった。
「……"また"死んじゃったの……?」
"また"?お祖母様がこの世界で死ぬのはこれが初めてじゃない……?
お祖母様が死ぬ度に、こいつは何度もこれを繰り返していたのか。
「おかしい……なんでお祖母様ばっかり死んじゃうの?なんで……いやいい。また聖杯で生き返らせればいいだけ。何度でも、何度でも___」
「いい加減にしなさい!!」
叫びにも似た怒鳴り声。それが自分の腹から出ていることに気づかず私は言い続けた。
「貴女はお祖母様を振り回しすぎた。自分のエゴしか見ないで、お祖母様の望みも知らないで!これ以上彼女を苦しめるな!大切な人を怪物にするな!!」
予想外だったのか向こうも目を見開いている。かと思うと今度は呆れたようにため息をついて言った。
「本当、同じ1人の人間だったのか疑いたくなるほど気が合わないね。永遠を望まない人なんてこの世のどこにもいないよ。永遠を望むからこそ人は禁忌に手を染めるし、何も知らない別世界で生きるものまで手にかける」
「どれだけ御託を並べようとも私は変わらない。人類史がどうとか知ったこっちゃないし。私にはこの世界さえあれば他はどうなろうと構わない」
呆れた。と言うより腹が立ってきた。
理想の姿と自称する自分の反面のこうも幼稚で傍若無人な様を見ると、恥ずかしいし呆れるし、世に存在するありったけの負の感情を詰め込まれたような感覚になる。
最早話し合いは不要。何としてもこいつを止める。私にはその義務がある。後に生まれ変わる大切な人の魂の未来のために闘おう。
未だ瓦礫が散乱する中、邪魔のない少しの間、自分との闘いが始まった。
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時