episode 25：藤の独白 ページ27
必要最低限の買い物を済ませた頃にはもう夜になっていた｡
明日の行動を決め､軽く食事を摂り皆仮眠に入った｡
その中立香は見張り引き受けて1人テントの前に座っていた｡
ふと買い物に行った街中を思い出す｡そう言えば自分が前にいたところもあんな感じの都会だったっけ｡そんなことを考えながら夜が明けるのを待っている｡
どこからか草が揺れる音がした｡誰か抜け出していたのか､いやそれなら彼が気づかないわけがない｡
姿を見ようと目を凝らすと影は上から降りてきた｡光のない藤の瞳､先程のオロチオルタだ｡
｢っ…なんでここが…?｣
｢残った魔力を辿れば簡単に見つけられるよ｡あぁ待って､左目を連れに来たんじゃないの｡話を聞いてほしいんだ｡聞いてくれる?｣
立香は答えない代わりにオルタを睨む目をより鋭くした｡
まぁ勝手に話すけど､オルタは腰を下ろして話始めた｡
私はね､拾われた子なんだ｡山に捨てられてた赤ん坊を村の村長が拾ったの｡
まぁかなり大事に育てられたよ｡村長に育てられたからって思うかもしれないけど違う､その後に大事なことが控えてたの｡
八岐大蛇って知ってる?古事記に出てくる蛇の怪物｡あれが村に封印されててね｡完全に殺す為には人に取り憑かせて格を落としてその人ごと殺さなきゃいけないの｡
いわゆる生贄ってやつ｡その為だけに私は育てられた｡
けどね､いざ取り憑かせてみたらそいつを飼い慣らせちゃって､殺す必要がなくなっちゃったの｡
でも村の人達は考えた｡もしこのことを恨んで叛逆に出たら…
彼らは私を国に売ろうとした｡国家保安部にね｡
｢まぁ売られる前に一悶着あるんだけど､今日はここまでね｡私朝は早いタイプだからそろそろ起きそうだし｣
それに…そこはまだ話したい気分じゃないから｡
そう言い残してオルタは姿を消した｡
まるで風みたいだ､立香はそう思った｡
気づくと空はぼんやり明るくなっていた｡
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作者名：巳月 要 | 作成日時：2017年12月25日 22時
