episode 22：名前 ページ24
襲いかかるマネキンたちを払い先に進む。
細い路地を曲がり都会の喧騒から少し離れたその先には､冷たく不気味にそびえ立つ鉄の城が_____
｢なっ…!?｣
そこにあの城はなく､反対に静かに佇む日本家屋の屋敷が建っていた｡
｢オロチさんの反応からしてここが変質のポイントのようですね｣
“手入れも行き届いているみたいだ｡きっと誰か住んでいるんだろう｡今君たちがいる場所も多少場所はズレるが霊脈も安定してるからそこにサークルを作ってくれ”
｢そうですね｡流石に民家にサークルを作れません｡早速設置して服などを支給してもらいましょう｣
マシュがサークルの設置をしている間私は屋敷の門を見つめていた｡
じっと見ていると門から1人出てきた｡植木に水をやるその姿に私は見覚えがあった｡
｢お祖母様…?｣
確証のないその言葉をぼそっと口に出した時､私に気づいたのか彼女はこちらに駆け寄ってきた｡
｢おかえりなさい___ちゃん｡ん?その格好…お祖母ちゃん知ってるわよ｡コスプレって言うんでしょ?｣
｢あ…えっと…｣
その時私は違和感を覚えた｡不確かな違和感だが次の瞬間確かなものに変わった｡マスター達に話しかけたのだ｡
｢___ちゃんのお友達?いつも___ちゃんと仲良くしてくれてありがとうね｣
やはり私の名前だけが聞こえない｡その部分だけテレビの砂嵐のようなノイズで遮られている｡
マスター達も戸惑っている｡なんとか距離を取らなければ｡
｢お祖母様､私この人達と少しやることがあるから先に家に入ってて｣
｢はいはい｡あまり暗いところには入らないようにね｣
お祖母様はマスター達に会釈をすると門の中へ入っていった｡
話を聞くにマスター達には私の名前はしっかり聞こえたらしい｡何度も呼んでもらったが1回も聞こえなかった｡
｢これも特異点の影響でしょうか｣
｢オロチという名は真名ではなかったのでは?カルデアにも名を伏せた英霊は沢山います｣
｢とりあえず落ち着いたから野宿出来そうな所を探そう｡近くに丁度いい林があるらしいよ｣
辺りは既に真っ暗｡幸い人もいない｡マスターの言う通り今のうちに林に入った方がいい｡
移動しようとしたその時､どこからか童謡を歌う声が聞こえた｡
かごめ かごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀がすべった
後ろの正面だあれ?
｢…みーつけた｣
episode 23：歪曲理想都市 渋谷→←episode 21 ：襲撃
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作者名：巳月 要 | 作成日時：2017年12月25日 22時
