episode 20：特異点 ページ22
翌日､ブリーフィングに来た立香とマシュを迎えたのはいつもより険しい顔をしたロマニだった。
｢立香君､マシュ､ここに来る時にオロチを見なかったかい?｣
｢いえ､見ていませんが…ドクター､何かあったんですか?｣
｢…新しい特異点が発見された｡時は2006年､場所は日本の都市渋谷｡ただ特異点が発見されただけならボクも驚かない｡問題は別にあるんだ｣
隣のダ・ヴィンチも珍しく真剣な顔で言う｡
｢1つはその特異点が元の歴史に成り代わり“実際にあった歴史”として確立しようとしていること｡これはキャメロットに並ぶ異例だ｡そして2つ目はそこに過去に回収した聖杯が関わっていることだ｡それも不運なことに特異点Fのがね｣
｢確かに異常だけど､また取り返しに行けばいいだけじゃないか｣
忘れたのかい､ロマニは眉間に皺を寄せて言った｡
｢あれは他と違って呪いを溜め込み汚染された聖杯｡過去に聖杯の泥によって起きた災害の記録もある｡ここまできて分からない君じゃないだろ?｣
立香の脳裏に崩壊し燃え盛る都市が浮かんだ｡
｢けどそれとオロチがどう関係するの?｣
｢彼女は殆ど知られていないがその渋谷出身だ｡当然真っ先に容疑者に挙がる｣
とにかくすぐ彼女がいるか確認をとロマニが向かおうとすると扉の方からそれを止める声がした｡声の主は賢王､キャスターギルガメッシュだった｡
｢あれならまだ寝ている｡此度の件を起こしたのはあれの半身だ｣
｢どういうことだい?賢王｣
｢あれは召喚当初から霊核が欠けていたのだ｡青の槍兵は気づいていたようだかな｡半身とは霊核の欠片｡見れば分かるが半分は持っていかれている｣
｢半分!?現界しているのがやっとじゃないか!｣
ロマニを無視し賢王は立香に言った｡
｢雑種､此度の編成にあれは入れるな｡もし敵に回れば厄介だ｣
立香は少し考えると微笑んで､でもしっかり賢王の目を見て言った｡
｢賢王はよくオロチを見てるね｡それに凄く心配もしてくれてる｡ありがとう､でも俺はオロチを連れていく｡俺はオロチの核ならオロチ自身が取り返さないと行けないと思うんだ｣
彼は本気だった｡それを悟った賢王も好きにしろ､と一言置いて立ち去った｡
｢ドクター､レイシフトの準備を｡市街地戦の経験があるサーヴァントを集めよう｣
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作者名：巳月 要 | 作成日時：2017年12月25日 22時
