episode 11：戦力外通告 ページ13
意識が戻り､目を覚ますとそこには洗練された無機質な白が広がっていた。
｢ここは…？｣
｢医務室です｣
返答したのはナイチンゲール婦長。手で消毒液を伸伸ばしながら彼女は近くの椅子に座った。
｢極度の魔力不足で倒れていたのです。そして通りかかった彼がここまで運んだのです｣
示された方を見ると入口付近に座っているあの槍兵がいた。
礼を言おうと体を起こすが､婦長に強引に止められまたベッドに戻ってしまった。
｢動かないで。私の魔力を送りましたが､それも気休め程度でしかありません。しばらくは安静に。どうしてもというのであれば縄で縛りつけますが｣
気迫に押されて私が静かになったのを確認すると､用事があると言って婦長は医務室を出ていった。すると入れ替わって槍兵が彼女がいた椅子に腰掛けた。
｢いやーびびったびびった。魔力不足になる奴は何回か見たが､倒れたのはお前が初めてだ｣
あぁ､私はとんでもない失態をしてしまったようだ。今回のことで他より劣ると思われてしまえば､私は…
｢もうマスターには言っておいた。しばらくお前は休みだってよ｣
｢は…？｣
聞きたくなかった戦力外通告。最悪だ。
今はロクに動くことも出来ないし､これでは本当にただのガラクタだ。
｢まぁ最近出っぱなしだったし､いいんじゃねーの…って､なんで泣いてんだ｣
気がつくと私の目から大粒の涙が零れていた。
何度拭っても止まる気配はない。
やけになったのか私は口走ってしまった。
｢…使われなきゃ意味が無い。いるだけじゃ私は無知な化け物だ。化け物だと恐れられるのはもう嫌だ。だったら道具に､機会になっていた方がいい｣
一呼吸のうちに早口で言い切り､そこから私は黙り込んだ。漂う沈黙に胸が締め付けられる。彼に何を言ったところでどうにもならないのに。
彼が私を呼ぶ声で沈黙が破られた。ゆっくり彼の方を向く。
彼の赤い双眸が見えた瞬間､彼の指が私の額を弾いた。
突然のことに動揺を隠せない私を彼の真剣な瞳が見据える。しばらくして彼が口を開いた。
｢お前マスターをなんだと思ってんだ。1度でもお前や他を道具だなんて言ったことがあったか?｣
問い詰められて何も言い返せない。俯く私に彼はまた言葉を紡ぎ出した。
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作者名：巳月 要 | 作成日時：2017年12月25日 22時
