episode 9:食堂にて ページ11
各々食事を済ませ静かになった食堂では、食器の片付けをするエミヤとそれを眺めるクー・フーリンが残っていた。
「君は部屋に戻らないのかね」
「今戻ったって他の俺が騒がしくて休まらねーよ。…なぁ、お前も現代の出だろ?秘密警察っつーの、なんか知らねーの?」
「私は別に国家組織の構成員ではなかったのでな。ただあの様子からするに、良いとは言えないような環境だったのだろう」
手を拭きながらエミヤはまた口を開いた。
「だか、知らなかったというので彼女を傷付けてしまったのなら、後で詫びなければな」
その言葉にクー・フーリンは半分閉じていた目を開き、そしてからかうような笑みを浮かべた。
「ほぅ、あの弓兵が詫びに。昔からじゃ考えらんねーな。明日は何処かしら故障するな」
「私をなんだと思っている。非礼の詫びくらいする。だがまぁ、確かに、前であればそんな行動しなかっただろう。こうまで変わってのは…マスターの影響が大きいだろうな。古株の君ならわかるだろう?」
確かに今回のマスターは他よりサーヴァントの人間性を重視している。歩兵も、王も、神も、怪物も、彼の前では等しく人間として扱われる。どんなに角のある者でもしばらく過ごせばその角も取れる。
初期からいたクー・フーリンは十分過ぎる程それを分かっていた。過去の聖杯戦争で対峙した少年の陰を重ねる程に。
「変わったと言うのは君も例外ではない。特に最近はオロチのことばかりだ。何か因縁でもあるのかね」
「そういうんじゃねーが、なんかな、あいつ妙なんだよ」
「ほぅ、妙と言うと?」
「…いや、気のせいだ。あいつが喚ばれてそんなに経ってないってのもあるんだろうからな」
そろそろ戻るわ。彼は腰を上げて食堂を出ていった。
君は随分変わったな。エミヤも少し間を置いてから、部屋へ戻った。
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時