検索窓
今日:4 hit、昨日:34 hit、合計:7,078 hit

その写真には3人が映っていた。 ページ18

「は?何言ってんの?」


きーさんは真顔で平然としているアストに威圧がかった声で言う。

アストは少し寂しそうな顔をしていた。

その手には数枚の書類と写真が握られていた。


「これ持って逃げろって…馬鹿じゃないの?」

「それはこの国に言ってよ。」


手渡された写真には幼い少女が3人映っていた。


「此れ、誰?」


全員見覚えのない顔に戸惑いを隠せないきーさん。

アストは悲しそうに言った。


「誰だっていいと思う、ほら、荷物持って…」

「アスト、」

「この街はもうきーさんしか住人が居ないんだから、早く行かないと。」

「どういう事!?ねえ!アスト!!」


いつの間にか纏められていた荷物を持たされ手を引かれる。

連れて来られたのは獣人の住む森だった。

きーさんは其処に見覚えがあったが思い出せない。


「ここは安全だと思うから、危険だと思ったらどこでもいい、走って。」

「アス…」

「私は行かないと、皆を待たせてるから。」


そう言って来た道を引き返すアストの背を見詰め、

何があったのか理解できないきーさんは途方に暮れた。


「何でよ、アスト…」


虚空に消えた其の声と共に遥か遠くで銃声が聞こえた。

まさか、と思った。


(戦争?)


ここ200年は無かった戦争が今になって起こったというのだ。

きーさんは手渡された写真を見た。

やはり知らない少女が映っている。

ガサリ。

誰かが近付いてくる足音がした。


「あ、居た。」

「誰ですか?」


目の前のふわふわした獣人はきーさんの手を引く。


「私は亜冴腐、貴方はきーさんですよね?アストさんに言われて来ました、
貴方を守護致します。」


亜冴腐は宙に漂いながらきーさんを導く。

導かれるまま辿り着いたのは獣人の住処だった。

人間は1人も居ない。


「戦争が終わるまでここに居てもらいます、いいですね?」

「アストは…アストが何で…獣人と…?」


その疑問に亜冴腐はにっこり笑って答えた。


「貴方もアストさんも獣人じゃないですか、ここで生まれた同胞は
人間として過ごしても記憶がなくても皆仲間、歓迎しますよ?同胞よ。」


その言葉に写真の記憶は蘇らなかった。

人影と悪魔と死神、3人は戦争を見詰める。→←ぽとりと落ちた写真を拾い上げる気力が無かった。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.2/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

龍巳@キチガイ - 一部名前を変えている方もいらっしゃいます、コメント欄で名前を晒すのも止めて下さい。中傷、無断転載も同様です。ルールを守って下さいね。 (2016年10月7日 22時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 感想はこちらのコメント欄にてお願いします、TwitterのIDを載せたりするのは絶対にやめて下さい、評価は星とTwitterのふぁぼでお願いします。 (2016年10月7日 22時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:龍巳@キチガイ | 作者ホームページ:ホームページの追加は禁じます。  
作成日時:2016年10月6日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。