た す け て よ

45 ページ49

莉犬side




『あーもう！！アイシャドウ上手くいかない！！』


『ボタンかけ間違えた！！！』


『前髪上がらない！！！』





すとぷり初の無観客Liveに緊張している俺は

普段余裕でできることが上手くできない








『こんな頑固な前髪俺のじゃない！！！』





そう言って最近買った男性用コテを持ってドタバタしていると





すごい顔をしたAが近づいてくる


どうしてそんなに2歳児のイヤイヤ期を見つめるような目で俺を見ているのか







「莉犬さん早く座ってください」






『え！！！前髪してくれるの！！』



俺の持ってるコテを早く渡せと言いたいんだろう手を俺の前に差し出している









『なんか懐かしいね』





前髪を上げてくれてる名前の首元が俺の視界に入る






「そんなことないと思いますけど」







久しぶりに俺のために世話焼きを発動してるAがかわいくて嬉しくて仕方ない俺に対して冷たいことを言ってくる









その゛そんなことないと思いますけど ゛はさ






まだ抜けてからそんな経ってないよってことを表してるんだよね？





すとぷりにいた時の記憶を消してるわけじゃないよね







取り戻す。取り戻したい。なんて強気で言ってるけど



不安は募るばかり






帰ってきてくれないんだろうな

俺の事なんて忘れちゃうんだろうな

俺の事嫌いなんだろうな

すとぷりなんてAにとって黒歴史なのかな








Live前なのにこんなことばかり考えてしまう





俺の前には鏡を持って俺の身長に合わせて少し屈んでいるA。








『どうしたの？』




「どうしたのじゃなくてどうですか？」









俺がやったら全然綺麗に上がらなかった前髪はAのテクニックにより上がった









「ボタンがぁーー！！あー！！！」





ボタンがどうかしたのであろうころちゃんが叫んでいるのがAの耳にも届いたようで




溜息をついてころちゃんがいる所に向かおうとしてる







そんな君を捕まえて




『今日の俺かっこいい？』





そう聞くと




「いいんじゃないですか？」






ちがうよ、そんなのじゃない





『かっこいいって言ってくれないと頑張れない』





駄々をこねる俺に対して





「かっこいいですよ」









そんなことを言ってくれる君









本心じゃなくても良い

それで頑張れるんだから

46→←44

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す