幻影 (続編のリンクありです) ページ50
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「聖、ホントに絶対、俺から離れないでよ」
「は、はいっ…」
何か出て来る気配はない。呪力に覆われているのは感じるけど呪霊の気配もない。
余りに奇妙な今の状況に寒気を覚えながら、もう一歩こちらへ寄るようにと聖の手を引いた。
なぜ水の中に沈めない?閉じ込めるにしても動揺して体勢の整わない内に襲った方がいいだろ?
何の意図が…
暗闇の中で俺にしがみつく聖の体温だけを感じながら、頭を回し始めた時。
「Aくん」
「…、は……?」
「一色さん…!?」
思わず、体から力が抜ける。
緩んだその手を聖に強く握られた事で、意識を引き戻した。
目の前にいる幻影を睨み付けて細く長く息を吐く。
「…誰だオマエ」
「…? Aくん、何があったの?私が居なくなってから誰が育ててくれたの?お母さんに教えて?」
「っうるさい!オマエは俺の母親じゃない!」
「一色さんっ!誰と話してるの!」
泣きそうな声で叫ばれた言葉に、驚いて聖の方を見る。
聖には見えてない、聞こえてない?
何がしたいのか本当に分からない。何の意図があってこんな事を…
ぶんぶんと首を振って頭を整理しようとしていたら、また聖の手に強い力が入って。
どうしたんだと慌てて尋ねれば、か細く掠れた声が俺に言う。
「ぉ…おかあさん、がっ…!」
「聖も…?」
「Aくん、こっちへ来て。お母さんによく顔を見せて」
「っ…、」
聖の手は離さないまま、あの頃と変わらない優しい声に強く唇を噛む。
『Aくん、要くん、大好きよ。お母さんはいつでも、2人と一緒にいるからね』
約束した癖に。一緒にいる、側にいるよって言った癖に。そのくせ離れて行ったのはそっちなのに…
「…今更、僕にこっちへ来いなんて言うの」
「Aくん…?」
「俺ね、変わったんだよ。要と…お父さんとお母さんを守るために」
そのまま銃口をゆっくりと持ち上げて、ゆっくりとトリガーに指を掛ける。
俺はもうあの頃の『僕』じゃない。
もう過去から決別した『俺』なんだ。
だから、お母さん
「…邪魔しないで」
そのまま、トリガーを引こうとして。
「あ"あぁあぁあっ!!!やめてくれ!!」
「っ聖!?」
「ぁっ…い、一色さんッ!!」
「聖!!」
悲痛な叫びと共に、手が離れた。
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そろそろ死にそう 2
続編です!
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時