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嫌な予感 ページ49

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「要く〜ん、お昼だよ〜!」


「はーい!」



階下から聞こえる淳司さんの声に、取り敢えず筆を置いてパレットにラップを被せる。

酷い絵の具汚れだけタオルで拭ってから慌ただしく部屋を出て、お湯でジャブジャブと手に付いた絵の具を洗い流した。


土曜日でも、任務ってあるのかな…

電話したら迷惑かな


優しい兄の顔を思い浮かべながらそんな事を考えて、淳司さんの正面に腰を下ろすと出されていたのはボロネーゼで。

好物が目の前にある事で余計な思考が消え、笑顔でフォークを手に取った。



「いただきます!」


「は〜いどうぞ」



トマトソースたっぷりの、僕の一番好きなパスタ。


小さい頃は兄さんも一緒に、お父さんとお母さんと4人で…___


遠い日の思い出をなぞりながら口を動かしているのを悟られたのか、淳司さんがふと立ち上がってオーディオ機器に向かう。

流れてきたJ popは最近流行りで、お店に行くと流れていたりする曲だ。

細やかな気遣いに感謝と少しの申し訳なさを感じつつ笑ってお礼を言い、そういえばと学校であった事を話し始めた。






「美味しかった〜。ご馳走様!」


「それは良かった、また食べようね」


「うんっ」



立ち上がって食器を下げに台所へ歩く途中、棚にぶつかってしまって嫌な音が響いた。

ぎゅっと瞑った目を開いて恐る恐る床を見れば、落ちたのはガラス製の写真立てで。

慌てて食器をシンクに置いて、傍へ膝を付いた。



「ぁ…割れちゃった、」


「私が片付けよう。要くんは平気?」


「う、うん。……でも何か、嫌な感じがする…」


「嫌な、感じ」



何か良くない事が起こる、"気配がする"とかじゃない。"確信がある"んだ。



「兄さん…」









ーーー









2人揃って足を踏み出した。


____瞬間。




「ぅああぁあああっ!!?」


「ッ…! 聖、手ぇ絶対離すな!絶対!!」


「いぃぃ一色さんっ!!」



踏んだと思った瞬間竜巻のように水が渦を巻いて俺と聖を巻き込み、ヤバいなと脳が認識した瞬間に2発、弾を撃ち出した。


手どころか身体にしがみついてくる聖を抱き込んで庇いながら、水の球体の中に閉じ込められたらしい事を悟る。

ぐるぐると渦を巻くようにしている水の流れは見えるけど、自分達は呼吸できてる。

暗くてよく分からないけど、打ち出した音が響いたという事は然して広くもないはず。


さてどうするかと頭を回し始めて、グリップを握り直した。


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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時

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