テレビ電話 ページ42
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「おっ。繋がってる?お〜い、憂太く〜ん?」
『あはは、聞こえてるよ。久し振りだねAくん』
「ねっ!えーと僕が10歳だったから…顔見るのは6年振り?じゃない?」
ココアを作って、ノートパソコンを開いて。
少し音声に粗が混ざりながらもきちんと顔が見えた従兄弟は幼い頃のように柔和な笑顔を浮かべて頷いた。
『っていうか…ま、待って。それっ、髪!どうしたの!?』
「ん、染めた。でも黒も似合うでしょ?」
『に、似合うけど…ぁあ、五条先生が言ってたのはこういう…』
顎に指先を添えて何やらブツブツと零している憂太くんを見て首を傾げれば、ハッとしたように顔を上げて照れた様に笑う。
変わらないその様子にホッとした。
それから少し、近況報告だとかたわいの無い会話をしたりして。
「てゆーか驚いたんだよ、憂太くんが高専の先輩だって知った時。何があったのさ」
『そんなの僕だって同じだよ。…まあ何があったとかは追々、ね。でもAくん、要くんは平気なの?体弱いのに…』
「ん〜、まあね。でも淳司さん…父方の叔父さんが面倒見てくれてるから今は平気」
そっかぁ、なんてへにゃりと安心したように笑う憂太くんに笑顔を返してココアを一口飲み込む。
それからはアフリカでの話を色々と聞いて、バオバブの木とかシマウマとかに驚愕する俺を見る度に画面の奥で笑われた。
そうして本題に入ったのは、20分も後のこと。
『あのね、怒らないで聞いて欲しいんだけど…』
「え、なに。怒らないよ」
妙に居た堪れない様子で言い淀む憂太くんに続きを促せば、こっちから視線を逸らしたままで話し出す。
『五条先生が来た時さ、その…昔のAくんのこと話しちゃって』
「……わーお」
『ごっ、ごめん!あの時は今のAくんのこと分からなかったし、単純に先生が生徒の事を知りたいだけだと思ったから…!』
「なるほどね」
『でもAくんと手紙でやり取りしてたら先生あの時探ろうとしてたんだなって気付いて、それで謝ろうと思って…』
しゅんとして謝罪を口にする憂太くんがあんまり弱々しいものだから、思わず笑いながら別に良いよと首を振る。
「今の所は特に何も言われてないし、何にも支障はきたしてないから。ところで僕のどんな事を話したの?」
『えっとね…____』
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時