一色ってさ、 ページ22
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「ねぇ五条せんせ〜」
「ん?」
「一色ってさ、ほんとはヤンキーじゃないんでしょ」
あんまり突然だったものだから、一瞬ポカンとしてしまった。
「…えっと?」
「ヤンキーみたいに振舞ってるだけで、ほんとは優等生タイプなんじゃない?」
琥珀の瞳が純粋な疑問の色を湛えてこちらへ向けられるものだから、いつもならテキトーに返す所を思わず真剣に考え込んでしまった。
それは僕も思ってた事だよ、悠仁。
それが正直なところだけど、言ってしまうのはAに少し申し訳ない気がして。
だって彼はあんなに苦しそうな顔をするから。
『カッコいいな…』
『……僕も、あんな____』
キラキラとした憧れの眼差しだと思った。
でもそれだけじゃない。憧憬と焦燥、羨望と諦観まで含んだ眼差し。
凡そ高校生から向けられる感情じゃない。
あの子の過去に関してはよく分からないというのが事実だ。
ご両親の事も知らないし心配でありながら、生徒のそういうあれこれに関して現に干渉するのも気が引ける。
「うーん、僕もAの事はよく知らないんだよね。弟さんを大事にしてる事くらいかな、知ってるのは」
「そうなの?」
「だからさ、悩んでるように見えたらちゃんと話聞いてあげてね。引き際は弁えるべきだけど、バリバリ殻破ってっちゃってよ」
「あははっ、卵じゃないんだから。でもそうだね。どうせなら仲良くしたいし!」
「そうそう。青春は短いからね〜」
僕らが犯した間違いを、君達には犯して欲しくないから。
「切磋琢磨して、強くなってよ」
「応!」
真夏の太陽みたいな笑顔を見せる悠仁に笑い返してDVDデッキに向き直り、カチャカチャと機械を弄っているとふと悠仁に声を掛けられた。
振り向けばその手にあるのは画集と解説書。
「何これ?これも何かに使うの?」
「ああいや、それはAにあげるやつ」
「へぇ〜っ。一色って絵好きなの」
「あはは、努力家なんだよ」
「?」
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時