ヒーローかよ ページ19
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「もう勘弁してくれホントに無理だって…!」
「しゃんとしなさいよ!男でしょ!?」
「は、はいッ」
もう訳が分からない。
建物に入ったら何か構造おかしいし、玉犬はいなくなるし恵と悠仁が言い合い始めるし、極め付けに何か変な所に引き摺り込まれた。
どこまでも広がる闇の中、釘崎と背中合わせでオロオロしていたらふと緊張感が走って顔を上げる。
「うっ…そだろオイオイオイ」
「しゃんとしろって!アンタは私が守ってやるから!」
「ほんとカッコいいね羨ましい!!姐さんって呼ぼうかな!!」
そんな会話を交わしながら服の中へ手を突っ込み、セーフティを外して構えた。
だだっ広い空間の中、鋭い破裂音と金属音が響いては消えてを繰り返す。
「クッソ数多すぎだろ…!」
ただただ連続で撃って撃って撃って。
こんな所で射撃の腕が上がっている事を実感するなんてちっとも平和じゃない。
「銃!何丁持ってる!」
「今日は3!けどもうワルサーも残弾無くなる!」
「わる…?知らねえけどあと残りは!?」
「17発!」
ちょうど弾が尽きて最後のマガジンに変えた瞬間、横から呪霊が物凄い勢いでぶつかって来て脚に激痛が走り、手の力が緩む。
ーーやっべ脳揺れてる
そんな事を考える余裕を別の所に使いたいのに、思うように体が動かなくて。
何とか呪具を構えて目を瞬き、向かってくる呪霊を避けつつ床に滑るワルサーに手を伸ばした。
「ッ…釘崎!」
釘が尽きたのか焦った様子の背中に呼び掛けて、思い切り銃をぶん投げた。
届いたかな、キャッチ出来たかな
ふらふらと揺れる視界の中、少し向こうの方で聴き慣れた破裂音が何度か響いて。
目の前の呪霊がジュワッと空気に溶けた。
「っは…!神エイムかよ、」
「一色!」
「待って釘崎、止まっ___」
駆け寄って来る姿を視界の端に捉えて手を伸ばしたけど、銃だけが床を滑って来た。
見れば、呪霊に掴み上げられる釘崎がいて。
「ぁああぁ頼む揺れんな…!」
何か喚いているのを聞きながら、ぐらぐら落ち着かない視界の中でグリップを握る。
ふーっふーっという自分の呼吸音だけが聞こえる中、集中集中と自分に言い聞かせてトリガーを引いた。
呪霊の腕が落ちて、消える。
「っ釘崎!」
消えた手の中から落ちてくる釘崎を抱き留めて庇ったその瞬間。
「一色!釘崎!」
ーーいや恵、ヒーローかよ
思わず笑ってしまった。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時