編入生 ページ11
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『もしもし、兄さん?』
「ん、俺だよ。そっちから電話掛けてくるとか…何かあった?」
『ああ、えっと…』
笑顔で話しているんだろうと容易に想像がつく明るい声とは一転、ごにょごにょと口籠る要に首を傾げながら続きを促した。
相変わらず小さな声ながらも耳に流れてきた言葉に、思わず固まる。
『あの…お墓に行く事に、なったんだけど…兄さんも行くかなって』
ミシリと音がして、スマホを握る手に物凄い力が入っていると気付く。
一度耳から離して大きく深呼吸をしてからもう一度マイクを口へ近付けた。
「俺は行けないと思う。次の休みだろ?予定空いてないんだ。ごめんな」
『そっか…っねえ、お友達はいっぱい出来た?』
「うん。丁度これから…、」
編入生と会う予定なんだ、と続けようとして階段を上がって来る2人が見えて口元に笑みが浮かぶ。
「新しい同級生来ててさ、これから会うんだ」
『あっ、編入生がいるんだ?ちゃんと仲良くね!じゃあ…また掛けるよ。またね』
「うん。また」
通話が終わった事を知らせる画面を消して改めて階段を見下ろせば、おーいと呑気に手を振る五条先生の隣にピンク色の頭をした元気そうなパーカー男子。
階段を上がり切った所で彼と向き合い、説明を求めて先生へ視線を向ける。
「よしっ。えっとねー、仙台から連れて来た悠仁。悠仁、こっちはA。泣き虫だから優しくしてね」
「うっせ。…えっと改めて、一色A。よろしく悠仁」
「虎杖悠仁!よろしく!」
名乗られた苗字に少し驚いて眉を上げる。
「へえ、イタドリ。虎に杖?」
「そうそう!えっ、1発で漢字当てられたの初めてなんだけど!」
「Aはすっっごく頭が良いから、勉強ならAに教えてもらうのが良いよ。英検準1級の漢検2級だっけ?」
何で知ってんだよと頬を引き攣らせながらも頷いてやれば、悠仁は馬鹿正直に「すげぇええ!」と目を輝かせた。
中学の時は特に打ち込む事もなくて、何か打ち込むものが欲しくて英検やら漢検やらをやってみたのだ。
射撃部は部長が結構ルーズな感じだっからあんまり活動も無かったし。
まあ高専に来た訳だし、これより上の級を取る気は無い。
「さっ、A!これから面談だよ!」
「はっ?」
「知らなかったん…?」
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時