９ 一章〜文久三年十二月〜 ページ10
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昨日の夜、辿り着いた場所がここだった。
＿＿＿＿「新選組」の本拠地。
そして部屋に通された私達。
ぐるぐると縛り上げられた私達。
千鶴が眠そうだったので、私の膝で寝るように言い、千鶴は、私の膝の上で寝ている。
千鶴「……ん……？」
むくりと、ゆっくり起き上がる千鶴。
『おはよ、千鶴。』
千鶴「…おはよう、ねぇ…兄様。」
今、姉様って呼ぼうとしたな。
千鶴「…ここが私の部屋なら良かったな。
…暖かい布団の中で目覚めたかった。」
『全部夢なら良かったってこと？』
千鶴「うん。…ねぇ、兄様。
昨日、兄様は何を見たの？
…私は、目も耳も塞いでたから何があったのか
分からないの…。」
『…それが正しいの。分からなくていいの。
大丈夫。私が千鶴を守るから。』
その時、ゆっくりと襖が開いて、
人の良さそうなおじさんが顔を出した。
？？？「ああ、目覚めたかい。」
優しそうな人は、井上と名乗った。
井上「すまんなぁ、こんな扱いで……。
今、縄を緩めるから少し待ってくれ。」
千鶴「え…？」
井上さんは苦笑しながら、
私達をぐるぐる巻にしていた縄を解いてくれる。
………手を縛る縄までは解いてくれなかったけれど。
千鶴「えと、あの、ありがとうございます。」
千鶴が頭を下げると、井上さんは少しだけ笑った。
井上「ちょっと来てくれるかい？」
『？』
井上「安心してくれ。
今朝から幹部連中で、あんた達について
話し合ってるんだが……。
あんた達が何を見たのか確かめておきたいってことになってね。
聞くだけだから、そんなに警戒しないでくれ。」
『……分かりました。』
私が立ち上がると、千鶴はよろけながらも
立ち上がった。
……井上さんは柔らかい言い方をしたけれど、
きっと私達に断る権利なんて無い。
未だに警戒心が無くならない私を見て、
井上さんは明るく言った。
井上「心配しなくても大丈夫さ。
なりは怖いが、気のいい奴らだよ。」
『はぁ…。』
とてもそうは思えないのだが…。
人斬り新選組の噂は、何度となく耳にしている。
その幹部の人達が
良い人だとは思えないんだが…。
千鶴「『…。』」
井上さんに案内された部屋では、
新選組の幹部達が私達を待っていた。
突き刺すような視線が一斉に向けられて、
思わず足を止めてしまう。
総司「おはよう。昨日は良く眠れた？」
千鶴「……あ」
沖田を見た途端、千鶴の肩の力が少し
抜けた気がした。
きっと知ってる顔を見て安心したんだろう。
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作者名：星空海月 | 作成日時：2021年3月1日 13時
